マスク確保策、感染時の休校判断…「現場任せ」に学校側は困惑 コロナ対策、国の学校再開指針は「最大公約数の印象」

柏崎智子、前田朋子、太田理英子、井上靖史 (2020年3月25日付 東京新聞朝刊)
 学校再開に向けて文部科学省が発表した指針は、新型コロナウイルスの感染防止について大枠の考えは示したものの、マスクの確保策や休校の判断など、対応の多くを地域に委ねた。教育現場からは「現場でできることは限られる」などと、混乱を案じる声が相次いだ。

足りないマスク「手作りして」と言われても…

 「なぜ学校を再開するかというと、国民の感染拡大防止への意識が高まっているからです」。24日の閣議後の記者会見で指針を発表した萩生田光一文部科学相は、感染はむしろ広がっているのに学校を再開する理由をそう述べた。

 ただ、そのかじ取りは現場任せだ。指針では、学校を感染拡大のクラスター(集団)としないための二本柱に「換気の徹底」と「マスクの使用」を掲げた。

 しかし、マスクは入手困難な状況が続く。会見で文科省健康教育・食育課の平山直子課長は、だれがマスクを用意するのかと問われると「政府が配布することは現時点では困難」と答え、家で手作りするなど学校、地域、家庭の自助努力に期待を寄せた。


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休校判断の目安なし 独自策定進める自治体も

 感染者が出た場合の対応は、2月下旬に出した通知では1人でもいたら学級や学校全体の閉鎖を検討するよう推奨。今回のガイドラインでは感染者と濃厚接触者は出席停止とするが、ほかの生徒の扱いや臨時休校まで踏み込むかについては、「文科省が保健衛生で専門的なことは言えない」と目安を示さないまま。市町村教育委員会などが、都道府県の衛生部局と相談して決めるよう求めた。

 首都圏の教育委員会や現場からは戸惑いの声が出た。さいたま市の細田真由美教育長は「これまで示された内容の最大公約数のような印象。(今回の指針だけでは)学校も困る」として、具体的な内容を書いた独自の指針を作る考えだ。

 同じく独自指針の策定を進める千葉県の担当者は、部活動の再開をどう表記するかに頭を悩ませる。

 文科省の指針は、人の密集や近距離での会話など、感染リスクが高まる3条件を避けるように工夫するよう求めている。担当者は「接触をする部活もあるので、中途半端に再開はできない。できるだけ早く条件を見極めないと」と話す。

休校分補習で教員の残業増える?「現場が疲弊」

 東京23区の公立小の40代校長は「学校でできることには限界がある」とため息交じり。1学級40人弱で、机を離しても密集状態。マスクがない教員もいる。「教員が話さないと授業が成り立たないが、マスクがない教員はどうすればいいのか。『マスクがないので、学校に行かせない』という親も出てくるだろう」と悩みが尽きない。

 杉並区の公立中の男性教諭(36)は、休校の遅れを取り戻すための補充授業で教員の時間外労働の増加を懸念。「未指導分を取り戻そうとして現場が疲弊する」と心配する。

 休校判断を地域に委ねたことについて専門家の見解は分かれた。感染症に詳しい沖縄県立中部病院の高山義浩医師は文科省の指針について「学校運営は地方自治の基本で、地元の専門家に相談して判断すべきだ」と評価した。これに対し、政府専門家会議のメンバーで日本感染症学会の舘田一博理事長は「休校の是非を地域で判断するのに迷いが生じるというのも理解できる。専門家会議がもう少し目安を示す必要はあるかもしれない」と話した。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年3月25日

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