先進校でなくてもできたオンライン授業 川崎・私立カリタス小学校の挑戦
調べた内容をアプリで出し合い、発表へ
7月上旬の平日、校舎2階にある理科室では、佐川勝史教諭(39)による6年生の授業が始まろうとしていた。黒板の位置にかけられた大きなスクリーンに、Zoomに入ってきた子どもたちの顔が出席番号と名前とともに次々と映し出される。佐川さんの後ろに設置されたホワイトボードには、授業のテーマや段取りが書かれていて、子どもたちが見られるようになっている。
この日は地震や津波などの「災害」をテーマに一人一人が調べた内容をグループで共有、話し合って、発表するための打ち合わせをするという授業内容。子どもたちは調べた内容を学習支援アプリ「ロイロノート」でまとめ、事前に提出。話し合うことで、それぞれの内容をよりよいものにし、発表者などを決めるのがこの日の狙いだ。
家庭科のボタン付けは手元がよく見える
佐川さんは選んだ災害のテーマなどから児童をグループわけ。25分程度の時間を与えた。話し合いの時間中も、佐川さんは迷っているグループに助言したり、質問に答えたりと忙しい。一方、進みの速いグループでは児童が率先して資料を共有するなど、Zoomの機能を活用して、学習を進めていく。「子どもたちはすぐに慣れて使いこなしています」と佐川さん。子どもたちのオンラインへの順応性の高さを実感しているという。
同じ時間の別の教室では家庭科教諭の関谷ゆりさん(62)が5年生とやりとり中。ボタン付けを学ぶ授業で、関谷さんはタブレット端末で自身の手元を映し、子どもたちはその映像を見ながら、解説を聞けるよう工夫した。「お裁縫はオンラインのほうがはかどります。手元がよく見えるし、子どもたちもおしゃべりしないから」
音読は一人一人の様子が教室より分かる
カリタス小学校では検討開始から2週間後の4月中旬には、ロイロノートによる課題の配布、添削、先生がコメントを書き込んで伝える指導を始めた。タブレット端末がない家庭には、学校の備品を貸与し、ゴールデンウイーク明けには、全員が参加するZoomによる双方向性のオンライン授業を本格的に開始。専科の図工、家庭科なども含めた全教科、全学年を対象とした。
オンラインならではの利点も見えた。学校では全員で一斉に教科書を読んでいた音読は、個別の音声が送られるので、教員の手間は増えるが、一人一人の様子がよく分かる。通常の授業であまり発言しなかった子が発言することも増えたという。
教員が動画を配信して授業の代わりにする学校もあるが、同校では考えなかったという。「子どもとのやりとりこそ、教育と考えているからです」と佐川さん。
教員に「チャレンジする伝統」があった
コロナ休校への対応では、全般的に私立学校はオンライン授業などの対応が進み、公立学校が遅れていると指摘されてきたが、カリタス小学校では、これまでオンライン授業に取り組んだことはなかった。学習支援アプリを利用していた先生も2、3人と情報通信技術(ICT=Information and Communication Technology)化も進んでいなかった。それでも4月に家庭のICT環境のアンケートを実施。教員側もZoomによる職員朝礼を始め、「2、3人しか使っていなかった」というロイロノートを活用した授業の準備を進めた。
校内や外部の教員が授業を見学して、評価、議論しあう学内外での公開・研究授業に積極的に取り組んできたカリタス小学校。若手の教員だけでなく、ベテランも研究授業を担当し、授業内容の見直しなどに日常的に取り組んでいる。また30年前から、子どもたちが自ら課題を決めて取り組む「総合教育活動」の授業を実施していた。教科書はなく、子どもたちが主導するため、必然的に毎年授業内容が変わっていく。
佐川さんは「教員の中に、新しいことにチャレンジする伝統があることが、今回、遠隔授業を短期間で実施できた背景にあるのでは」と考えている。
ベテランも若い教員や子どもから教わる
教員側に「若い人や子どもたちから教わる」という姿勢があることも大きい。当初は端末の操作などに不慣れだった関谷さんは息子や娘に端末の操作を習いながら、短い動画を作成したり、制作工程を写真で撮影できるようになったという。「休校にならなかったら絶対なかった経験。オンラインも撮影も楽しんでいます」
オンライン授業のメリットを生かそうと努力してきたカリタス小学校だが、教員たちはやはり、「学校に集まって協働で行う授業にはかなわない」と感じている。2学期からは通常登校を再開。ただ今後の感染再拡大や、インフルエンザなど他の感染症などで登校しにくくなった場合には、オンライン授業の再開も検討している。
端末だけあってもダメ、ICT専門教員を
課題もある。政府の「GIGAスクール構想」では、本年度中に児童・生徒1人につき1台、端末を配布することとなっている。公立の学校は国と自治体が負担を折半するが、私立学校は自治体分も学校が負担する。年間で3000万円以上の予算が必要で、現状では負担できる状況ではないという。
また端末を使った授業を定着させるためには、教員や保護者への質問に対応するICTを専門とする担当教員を置く必要性もあるという。佐川さんは「オンライン授業を始めた当初は週末も、問い合わせの電話が鳴りっぱなしでした。端末があっても子どもたちや教員が有効に使いこなせる環境でなければ、ほこりをかぶることになります」と強調する。
なるほど!
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別の私立に子どもを通わせている家庭の保護者です。
カリタス小学校の全面オンライン授業の様子も素晴らしいですが、オンライン→分散登校とオンラインと隔日併用→時差登校→オンライン、と感染拡大状況に即して一学期の日程を変容させ、学校側と家庭側、教員と子ども、の双方の思いを大事にして「学びと絆をつなげていく」実践をしている 晃華学園小学校(東京都調布市)の取り組みも素晴らしいです。なので、端的ですがご紹介させて頂きます。
詳細はHPに一部公開されていますが、GoogleClassroomを利用した毎日の密な連絡と課題のやりとりには安心感が有り、オンライン生授業(Zoomミーティング)では双方向での子どもと教員の生の音声がライブで飛び交うやりとりが展開されています。
毎日隣で授業参観みたいに見られる保護者としては、4月から教員も児童もオンラインに順応し学習効果を高めていき進化して行く様子がすぐそばで感じられ、教育のかたちが大きく変容して行く様子をリアルタイムで感じています。
もちろん、6月からの、一ヶ月半ではありましたが登校による通常授業での生活空間共有と、学級40人での様々な体験も、やっと会えた喜びで濃く充実したものとなったようで、その後オンライン授業に戻っても、内容や展開が「登校経験」が土台になったからこそ更なる進化を遂げています。学校側は常に前向きな、試行への行動力や情熱があると感じており、大変な年度ながらも、これからどのようになっても、信頼して親子ともに乗り切れるような期待感を持っています。