保育園選びの基本のキ!これだけは押さえたい14のチェックポイント
けれど、忘れてはいけないのが「子どもの安全が守られる保育園かどうか」という視点です。保育問題に詳しく、保育士資格も持つジャーナリストの猪熊弘子さん(53)に、保育園選びのチェックポイントを聞きました。14項目のチェックリストを作ったので、活用してみてください。
見学させてくれるか? 事故園の共通点は「見せない」
まずは、実際に保育園を訪ね、自分の目で見ることです。園長など対応してくれる先生の話を聞き、園の中もぜひ見学させてもらってください。
中を見せてくれるかどうかは、重要なポイントです。というのも、死亡事故が起こっている保育施設に共通しているのが、「保育室内を見せない」という点なんです。保育園側は、衛生面や防犯上の理由、そして「忙しい保護者の手を煩わせることなく、玄関でお子さまとお荷物をお預かりする」という保護者へのサービスを理由に挙げることが多いですが、今は公開保育が原則です。保育業界は「誰が来ても見せられる保育」を目指しています。いい保育園なら「いつでも見に来てください」と言えるはずです。
見学者を一度に集めて、何カ所かある施設の1カ所だけを見せるような園も、注意が必要です。ただ、施設がとても狭くて、見学者の受け入れが保育に差し支える園もあります。そういう場合は、「時間を変えてもだめですか?」「他の日ではどうですか?」と聞いてみてください。それでも見学を断られるようであれば、その園は候補から外した方がいいです。
昼寝の様子、保育士の配置、子どもへの接し方
施設の中を見る際には、掃除が行き届いているかどうか、防災・防犯上の対策が取られているかどうかなどをチェックしましょう。
可能であれば、お昼寝の様子も見せてもらってください。事故の危険があるとされる「うつぶせ寝」ではなく「あおむけ寝」をさせているか、保育士が見守っているか、昼寝中の部屋が明るいかも重要です。見学が難しい場合は、「昼寝中の事故が一番多いと聞いたのですが、見守りの体制はどうですか」と確かめてもよいでしょう。
保育士の配置も重要です。基準の人数より手厚く配置する園もある一方、中には「保育士」の有資格者が少ない園もあります。子の年齢別の保育士の配置や、有資格者の数、ベテランの保育士がいるかどうか、常勤の保育士の割合も、保育の質に関わります。経験豊富な保育者がいればクラスの余裕につながりますし、保育者が日替わりで保育するような施設では、一人一人の子どもの個性や健康状態を把握するのは困難です。
保育士が子どもたちにどんな接し方をしているかも見てください。子どもの腕をギュッとつかむような振る舞いがあったり、言葉遣いが乱暴だったりするのであれば要注意です。
慣らし保育は短い方がいい? いいえ、違います
慣らし保育の進め方も聞いておきましょう。何週間もかける園もあれば、「初日から長時間預かります」という園もあります。働く親にとっては短い方がありがたいかもしれませんが、子どもにとって初めての保育園生活は大きなストレスです。「慣らし保育はいりません」と言うような園には注意が必要です。保育園での死亡事故は、預け始めの時期に起こる割合が高いからです。初めての場所に連れてこられて、お母さんやお父さんではない知らない人と接する怖さでストレスもあるでしょう。また、赤ちゃんが激しく泣いたときに、泣きやませる技術がなかったり、保育室が狭くてその子が泣きやまないと他の子が眠れないからと、目の届かない他の部屋に寝かせられたり、うつぶせ寝にして上から布団を掛けられたりした子どももいます。そうやって事故が起こっているんです。
不幸な事故を防ぐためにも、慣らし保育は非常に重要です。保護者も大変ですが、「慣らし期間が長い方がむしろ安心」と考え、子どもと先生の間に愛着関係ができるまでは、丁寧に寄り添いたいものです。そうすることで、預け始めの事故の起きやすい時期を乗り越えられるのです。
お迎えに来た保護者に聞くのもおすすめ
その園に通っている子の保護者に話を聞いてみるのもおすすめです。特に認可保育園では、夕方の4時ごろにお迎えに来る保護者は割と時間に余裕のある方が多い。その頃に赤ちゃん連れでお散歩がてら園の近くまで行って、「実はここの園に入りたいと思っているんですけど、少しお話をうかがえませんか?」と尋ねたら、だいたい答えてくれますよ。園の近くに公園があれば、そこで遊ばせてから帰る親も多いですしね。私も聞きに行きましたが、実際に通わせている方の話はとても参考になります。
自治体の「立ち入り調査」をサイトでチェック
認可保育所も認可外の保育施設も、自治体が1年に1回以上、立ち入り調査を行うことになっています。結果をウェブサイトで公開している自治体もあるので、ぜひ調べてみてください。園のホームページや口コミサイトなど、インターネット上の情報だけで分かったような気持ちになってしまいがちですが、実際に園に足を運び、自分の目で見て判断してほしいと思います。自分の子の命を守るために、保護者も知識を持ち、行動していく必要があります。
猪熊弘子(いのくま・ひろこ)
1965年生まれ。一般社団法人「子ども安全計画研究所」代表理事。東京都市大客員教授。子どもは、双子を含む4人。弁護士の寺町東子さんとの共著「子どもがすくすく育つ幼稚園・保育園」(内外出版社)を2018年5月に刊行。著書に「死を招いた保育」(ひとなる書房)、「『子育て』という政治」(角川新書)、「保育園を呼ぶ声が聞こえる」(太田出版/國分功一郎さん、ブレイディみかこさんとの共著)など。
<特集「大丈夫?保育の質」トップはこちら>
なるほど!
グッときた
もやもや...
もっと
知りたい