公立保育園は存続か廃止か 小金井市長選で問われる保育行政のあり方 11月27日投開票

奥野斐 (2022年11月2日付 東京新聞朝刊)
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小金井市の公立保育園廃止の専決処分撤回を求めて開かれた抗議集会(10月8日撮影)=東京都小金井市で

 公立保育園の存続か廃止かを巡る議論が活発になっている。東京都小金井市では議会の同意を得ない専決処分で廃止を決めた市長が辞職に追い込まれた。11月27日投開票の同市長選は公立園の役割や保育行政のあり方について、改めて考える機会となりそうだ。

廃園へ条例改正 前市長が専決処分

 「通っている子どものことを考えていない。納得する説明がないまま、決まった」。小金井市で廃園予定の公立園に子どもを預ける母親は憤る。市は市立5園のうち、2園で来年度からゼロ歳児の受け入れをやめ、2027年度末に廃止する。定員や保育士を年ごとに減らすため、園内は徐々に寂しくなりそうだ。

 西岡真一郎前市長は廃園に向け、市立保育園条例を市議会の議決を経ずに専決処分で改正した。この強引とも言える手法は議会が認めず、辞職に追い込まれた。ただ、改正された条例はそのまま。2園のゼロ歳児の募集停止は実施されている。こうした現状への対応が問われる市長選となる。

 小金井市は将来的には他の一園も廃止し、計3園をなくす方針。いまの公設公営では老朽化による建て替えや運営の経費が市の全額負担となることや、待機児童減による定員割れなどを理由に挙げている。

背景は? 国が進めた「民間参入」

 公立園は、都内全体でも廃止が進む傾向だ。都によると、認可保育園は今年4月時点で3569園と、2004年の約2.2倍に増加。一方、公立園は1010園(2004年)から807園(2022年)へと減った。運営も自前で行う「公設公営」園はさらに少ない。

グラフ 東京都内の認可保育園と公立園の推移

 背景には、国が保育事業への民間参入を促してきた経緯がある。2000年に株式会社などの参入を認め、2004年度には「三位一体の改革」の一環で国が区市町村への補助制度を変更。区市町村が負担する公立園の運営費は4分の1から全額に引き上げられた一方、私立園の区市町村負担は4分の1のまま据え置かれた。

表 認可保育園の運営経費

 私立園の方が柔軟に運営できるとの指摘もある。2017年までに公立4園全てを私立園にした東京都羽村市の担当者は「延長保育や休日保育など多様なニーズに民間の方が柔軟に対応できる」と説明。公立園がゼロでも「総合的に保育サービスを提供しているので不都合はない」と話す。

世田谷区では公立園の民営化を中止

 半面、公立園を残そうとする自治体もある。世田谷区は公立園の民営化をストップしつつ、2034年度までに現在の公立46園を統廃合して39園にする。担当者は「公立園はセーフティーネットの役割があり、就業していない親の相談、支援の拠点でもある」と意義を述べた。

 小金井市は2園の先行廃止で、10年で27億円をコスト削減できると主張。ただ、廃園後に子どもが私立園に移った際の市負担分11億円を計上しておらず、削減幅の算定方法に疑問の声が上がっている。

民間の撤退に備えて残しておくべき

保育政策に詳しい明星大の垣内国光名誉教授の話> 小金井市はもともと公立園の割合が低いが、少ない公立園で子ども本位の保育を実践してきた。定員調整は公立園をなくす理由にはならず、むしろ民間の撤退に備えて残しておくべきだ。公立園は質の高い保育の実践・共有を通じて地域の保育水準を引き上げ、災害時の対応を率先して行うなど拠点の役割がある。人件費が低い民間事業者ばかりになるとすれば、保育士全体の処遇改善にも悪影響が及ぶ懸念もある。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2022年11月2日

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  • 匿名 says:

    私の身内は2人とも都内の私立運営保育園を選びました。

    その理由は公立では見られない、高い理念と教育方針に基づいた、幼児にとって大切な第一次環境の保護と実現に努めながら、保育士の方々も熱意と情熱を持ちながら、父母共に一体感を持って運営に参加してくれており時に達成感もあります。

    指導と指針も明確で、保育士の待遇においても具体的に水準が低いとは思えません。
    そこには様々な創意工夫を試みながらも、事業のための利益収益主義は見えません。

    保育環境を安定的に保障するのが、公立保育園の役割では無く、行政が如何に民を活用し、知恵と意識と努力を最大限に発揮出来るように、仕組みと指導管理を作る事がこれからの市政に求められていると思います。

    旧来の価値判断基準では無く、高い理念と教育方針に基づき、子供の教育平等機会を与え、世界に通用する人材の基礎を作れる教育とは何なのか?
    この事を考えて、財政面でも教育投資して行きたいですね。

     男性
  • 匿名 says:

    公立かつ公営の保育園は一定必須であると考えます。
    この問題に際して、そもそも保育園は教育とは違うので、論じる人にその誤解があると議論はかみ合わないでしょう。保育園はその目的から家庭的な場所であり、かつ子どもの権利が保障される場所である必要があります。競争の原理が馴染む業種ではないのです。

    会社として利益を上げようとすれば、設置数を上げて補助金を多く得ながら、人件費運営費を安く抑えることになります(なっています)。その結果、ワーキングプア保育士を多く生んでいる社会問題があります。ある日突然閉園になったケースもあります。

    子どもの養育の責任は第一義には保護者にありますが、働く親の子どもは国によって養護される必要があり、子どもの権利条約にも定められています。子どもを養育するに必要な、安定的かつ継続的な保育環境という点で、公にはそれを保障する義務があります。

    もちろん財政の一環であることはまぎれもない事実ですが、財政面のみを正義として事業の本質を見ないなら、それこそ本末転倒、事業自体の目的から外れてしまいます。どの子どももとりこぼさない、子育てのおおもとに立ち返って市民全体で考えていきたい問題。

     女性 40代
  • さとし says:

    小金井市にとっての財政の問題は大きく、存続を訴える人たちは待機児童の減少傾向も併せて主張をするべきです。

    公立保育園が高い教育水準をするべき(?)とはあまり現実的でないと思います。

    これら含めて民間が競争力を持った職員の処遇を含めた、質の高い教育レベルを上げさせる事が、小金井市を将来に渡って活性化させることになると考えます。

    さとし 男性 60代
  • 当事者A says:

    小金井市の公立園を利用してる保護者です。
    保護者側も一枚岩ではなく色々な考えの人が居ますが、多くの保護者は頭ごなしに廃止に反対してるのではなく、財政上の問題も理解していますが、今迄の経緯から市役所の背広組に不信感が強いのです。

    何年も前から話し合いは続いてきましたが、市側は保護者側からの質問に中々答えず堂々巡りが延々続き、話し合いで解決する気など無く話し合ったアリバイ作りしてるのでは?なんて印象が強いです。

    記事の最後の方に出てますが、財政効果の数字も都合の悪い項目を除外した恣意的なもので、優良誤認を狙ったミエミエの手法は市庁舎問題の時にも使った前科が有るのです。なので議会も市側に厳しいと思います。

    財政上の問題は有るので一市民として早期解決すべきとは思いますが、市側の結論有りきの姿勢がミエミエの間は解決が難しいのではないでしょうか。

    当事者A 男性 40代
  • 匿名 says:

    西岡前市長の意見も、必要
    財政の、問題もある

     女性 70代以上

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