動画見るだけで留学なの?「全員留学」を掲げ授業料値上げの千葉大 返金求める学生が署名活動
4年間で40万円超の値上げ
「外国人教授の英語による講義を動画視聴するだけ。これで全員留学と言えるのだろうか。ネイティブな英語の環境に身を置く本当の留学をしたかったのに…」。オンライン留学を受講した文学部3年の女性(21)は肩を落とす。
千葉大はグローバル人材を育成しようと、2020年4月から、原則全ての学部生と院生を対象に、海外留学(2週間~2カ月程度)を必修化する「全員留学」を始める計画を示した。
その全員留学に向けて、外国人教員の増員、現地授業料や渡航費の一部補助(各上限5万円)など制度充実のため、年間の授業料を約10万7000円値上げすることも発表。大学4年間で40万円超の負担増になる。当時の徳久剛史(とくひさたけし)学長は会見で、「経費節減や自主財源の捻出での留学制度導入は困難」と説明していた。
コロナ禍で海外派遣は中止
だが、新型コロナで海外への学生派遣は中止に。2021年度から、海外の提携校とネットでつなぎ、学生がライブ中継で講義を受ける代替措置を設け、留学扱いとした。渡航制限の間は、1600人がオンラインで受講した。千葉大が派遣を解禁したのは昨年8月。学生にすれば、コロナの収束が見通せない中、就職活動や卒業論文を考えると、いつまでも留学を先延ばしにはできない事情もあった。
大学側によると、オンライン留学でも渡航の場合と同額の経済支援をしており、「渡航を伴う留学の講義と同等の質と内容を担保している。現地との交流イベントもバーチャルを活用している」という。
本紙記者が学生に尋ねると、13人中10人が不満や疑問を口にした。英国の提携校にオンライン留学した法政経学部2年の男性(20)は「国内の授業をオンラインで受けているのと変わらなかった。なんでこれで値上げになるの?」とこぼす。カナダに留学経験のある教育学部4年の男性(22)は「英語を使うしかない環境で生活して自分を磨けたし、今も連絡を取り合う留学仲間もできた。講義が終われば日本語の生活に戻るオンラインではできない経験だと思う」と振り返る。
大学は返金に応じない方針
一部の学生有志は「オンライン留学では授業料の値上げの恩恵を受けていない」として、昨年12月から授業料の一部返金を求めて署名活動を始めた。
千葉大教育企画課の担当者は、値上げについて「グローバル教育の充実、遠隔授業を用いた学習支援にも力を入れており、留学だけでなく学内の教育整備に寄与している。留学制度には自己財源も使っており、値上げ分との切り分けは難しい」と説明。返金には応じない構えで、「留学制度の取り組みを丁寧に説明したい」とコメントする。
オンライン授業を巡り他大学で訴訟も
新型コロナの流行で一時、多くの大学がキャンパスでの対面から、オンライン授業に切り替えた。一方で、図書館など学内の施設が使えないことや「授業の質が低下した」として、各大学で授業料の一部返金を求める動きが相次いだ。
修文大(愛知県)は2020年度、オンラインが増えたことを理由に、後期授業料のうち5万円を全学生に返金。コロナ禍で大学が困窮学生らに財政支援するケースはあっても、授業料の返金はまれだ。明星大(東京)では学生が授業料の一部返金を求めて訴訟に発展。昨年10月の東京地裁立川支部の判決は「オンライン授業のみを行ったことが著しく不合理とは言えない」として、原告男性の請求を棄却した。
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