延べ151人の女児盗撮繰り返す 39歳元小学校教諭に有罪判決 教職選択の背景に性的関心も
懲役3年、保護観察付き執行猶予5年
判決によると2019~21年、保健室で健康診断の女児の着替えを撮影するなどし、修学旅行先の栃木県日光市の旅館では脱衣所に小型カメラを設置した。他に校内で当時11歳の女児の胸を触るなどした。
小泉裁判官は量刑理由で「教師という立場に乗じ、児童の精神的苦痛や影響が懸念される。責任は重い」と指摘。反省の弁を述べ、子どもに関わる仕事から離れていることなどから、執行猶予とした。
弁護側は、被告が小児性愛障害や注意欠陥多動性障害(ADHD)、のぞき見に興奮を覚える窃視症と診断され、現在も治療中と説明。犯行時は心神耗弱状態だったと主張したが、判決では「影響は大きくなく、完全責任能力があった」と結論付けた。
「全くないというと、違うかもしれない」。被告人質問で性的な関心と職業選択との結び付きを問われ、阿部被告が答えた。小学校教諭を志した理由を「教育の最初の段階で、子どもの成長に関わりたい」と説明した一方で、20歳ごろから小児性愛を自覚し、後ろめたさもあったと明かした。
少なくとも2年半以上、盗撮を繰り返した。当初は発覚を恐れたが、徐々に「これぐらい、いいんじゃないか。前回ばれなかったから今回も大丈夫」と止められなくなったという。
日本版DBSは再犯防止を重視するが…
中学受験大手「四谷大塚」元講師の盗撮など、教育関係者の性加害が相次ぐ。文部科学省のまとめで、児童生徒らへの性犯罪や性暴力で懲戒処分された公立学校や幼稚園などの教員は、2021年度だけで94人に上る。
子どもを性犯罪から守る仕組みは、再犯防止に重点を置いている。政府が創設を目指す「日本版DBS」も、子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴の照会が柱となる。
性暴力を犯した教員の復職の制限などを定めた2021年成立の「わいせつ教員対策法」の付帯決議では「わいせつ行為をする可能性が高い者を教壇に立たせない」などと、教員らの採用方法の検討を促した。
国はこれまで、採用時に性的な傾向の確認を求めるなどの方針を定めていない。文科省教育人材政策課は理由を「内心に関わる問題でもあり、小児性愛などを客観的にどう認識できるか、議論が詰まっていない」とする。
専門家「DBSの効果は限定的 採用方策の検討を」
教員の性暴力問題に詳しい精神科医で、性障害専門医療センター(SOMEC)の福井裕輝代表理事は、小児性愛障害の人が全て加害するわけではないと強調した上で「DBSだけでは効果が限られ、初犯の前の予防や支援が必要。人権上の問題を含め、採用時の方策などの検討を具体的に進めるべきだ」と指摘する。
センターがつくったチェックシートは、性加害の危険性を確認する質問に教職員が自己判断で答え、結果によって相談を促す。長野県など一部の教育委員会が導入した。福井代表理事は「本人が早い段階で自分の傾向に気付けば、加害を防ぐ可能性もある。排除だけではなく、職業訓練や治療につなげ、安定した仕事に就けるようにする公的支援を拡充する必要がある」と語った。
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