「うおおっ…!」男性管理職が苦悶する生理痛の体験研修とは 「仕事に集中できない」「配慮が必要」 自分ごと化が働きやすさに

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腹部に電極パッドを貼り、生理痛を体験する東京ガスの社員ら=いずれも東京都港区で(由木直子撮影)

東京ガスが初開催

 働く上でネックとなる女性特有の悩みについて理解を深めようと、生理(月経)の痛みを疑似的に体験する「生理痛体験研修」を東京ガスが4日、東京都港区の本社ビルで開いた。同社としては初の試みで、社内の役員と人事担当マネージャーが参加。参加者からは「想像以上の痛さで、仕事に集中できない」「会社として勤務上の配慮をすべきだと強く感じた」という声が上がった。

弱・中・強 3段階の痛みを体験

 縦9センチ、横5センチほどの長方形の電極パッド2枚を、おへその下の肌に貼り付け、緊張した面持ちで生理痛VR体験機器「ピリオノイド」の前に立った常務執行役員の斉藤彰浩さん(58)。「痛みのレベルは弱・中・強の3種類あります。8割の女性は『強』の痛みを感じていると言われます」という操作担当スタッフの説明を聞き、まずは「弱」に挑戦した。斉藤さんは「これはまだ大丈夫」。強さが「中」に切り替わると、「耐えられますけど、これが数日間続くと思うと嫌ですね」。

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痛みのレベルが「強」に上がると、耐えるような表情を浮かべる男性が多かった

 「うおおっ…!」。スタッフが「強」に上げた途端、斉藤さんからうめくような声が漏れた。「これは厳しい。だんだんしんどくなる。この痛みが定期的に来ると思うと憂鬱(ゆううつ)だ」。隣に並んで体験した執行役員で人事部長の五嶋希(のぞむ)さん(53)は「仕事中の重要な場面で痛みが来ると大きな影響があると率直に思う。生理の期間は年間数十日あるので、組織の問題として認知すべきテーマだと感じた」と話した。

知識はあっても痛みは分からない

 今回の研修は、女性の健康課題についての理解を深め、働きやすい環境を整備する目的で、人事部が企画。社内調査では、「生理や更年期などにより職場で困ったことがある女性」が約7割にのぼり、そのうちの4割以上が生理の症状によるものだった。

 同社では、生理中の勤務環境の整備として、2017年からは在宅勤務の導入を、今年3月からは1時間以上の会議では5分以上の休憩を取る取り組みを進めてきた。その中で、「生理痛については、知識としては知っていても、痛み自体は分かっていない」と感じた同部安全健康・福利室長の山田俊彦さん(51)が体験研修を発案した。まずは社内の各部署で働きやすさの促進役となる人事担当マネージャー(管理職)を対象としたこの日の研修を開いた。

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生理痛の体験で、痛みに苦笑いしたり顔をしかめる東京ガスの社員ら

痛みの体験が目配りのきっかけに

 研修に参加した22人(男性20人、女性2人)の人事担当マネージャーのうち、生理痛体験をしたのは男性19人。体験した1人で、財務部の人事担当マネージャー、加来(かく)顕一郎さん(44)は「すごく不快な痛みだった。『弱』でも集中力がそがれ、『強』は鈍痛がズシンズシンと響いた。座っているのもつらく、帰りたくなった。自分なら休んでしまうと思う」と、痛みがこたえた様子。四半期の決算など業務がピークを迎える時期もあり、「間違えられない仕事をしている最中に痛みが来ると、集中力がそがれてミスをしてしまいそうだ」と実感を込めた。

 加来さんの部署は約20人で、うち女性は3割ほど。「痛みの体験は自分ごと化のきっかけになった。個々人への目配りをしていきたい。年次的に『生理休暇を取ります』と遠慮して言えない人もいるかもしれないので、日頃から『使えるときは在宅勤務の制度を使って』と声がけをして、使いやすい雰囲気をつくりたい」と話している。

 人事部の山田さんは「つらさを言い出しにくい女性社員もいると思うが、生理痛を体験したことのある相手になら『わかってもらえるかな』『言ってみようかな』と思えるかもしれない」と期待する。研修後に「うちの部署でも体験会を開きたい」との相談もあり、「『まず知り、次に行動する』というのが目的だったが、早速行動に移してくれた参加者がいた」と手応えを感じていた。

生理痛体験機器「ピリオノイド」

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生理痛体験ができる「ピリオノイド」。右の電極パッドを腹部に貼りコントローラーで痛みの強さを調整できる=東京都港区で(由木直子撮影)

 個人差のある生理痛のつらさについて、「痛みの追体験を通して同性同士の理解を深められないか」と考えた大学生らが2019年に開発に着手。筋電気刺激(EMS)を用いて、生理時に生じる腹部の痛みを段階的に体験できるVR装置をつくった。この装置を、大学発のスタートアップ企業「大阪ヒートクール」(大阪府箕面市)が、より使いやすいウエアラブル装置として改良したもの。同社インストラクターの作田詩織さんによると、「生理痛体験」研修の提供を開始した2023年7月以降、メーカーやエンタメ企業など69カ所の約1500人が生理痛を疑似的に体験した(2024年7月16日現在)。

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  • 匿名 says:

    私は痛みよりも、コントロールのままならない出血そのもののほうが不快で、月経のたびに自分が女性であるという現実に打ちのめされます。

    「これ(痛み)が定期的に来ると思うと憂鬱になる」と体験者の男性側おっしゃってくださいましたが、初潮を迎えた10代のときの私は憂鬱を通り越して絶望しました。

    まるでなにもないかのように装って過ごしている女性たちを尊敬します。私もまた、装う一人なのですが……。

    少しでも理解を促進し、男女ともに合理的で健やかな職場環境づくりをしようという取り組みは素晴らしいと思います。

     女性

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