「視覚過敏や聴覚過敏=発達障害」ではない 学校行事はどうすれば? 人間関係のストレスで発症する人も
参加するプログラム自分で選んで
中3の娘が聴覚や視覚を含む感覚過敏という愛知県あま市の女性(49)は、サングラスや耳を覆うイヤマフの利用を勧める。その上で大切なこととして「キャンプの詳細を説明し、本人がキャンプや個別のプログラムへの参加を選択できること」を挙げる。「つらさは本人にしか分からない」とし、「日常でもこうした対応をわがままととらえず、理解者が増えることで安心して生活できることにつながる」と助言する。
浜松市中央区の女性(57)の高3の息子は視覚過敏などの症状がある。小学校で2泊3日の林間学校に参加する際、安心できる物を持っていく許可をもらい、クマの縫いぐるみを持参した。「不安はあるかと思うけれど、楽しい思い出になればいいですね」
茨城県古河市の女性(43)も大きな音などが苦手。症状は音源や光源から離れるほど軽くなるといい、「後方の列にしてもらう、人混みに行った後は1人で静かになれる時間をつくってもらうなど、より良い方法を見つけて」とする。
強い日差しや人混みで片頭痛になる愛知県春日井市の女性(37)は「普段と違う環境は、ストレスを感じやすい。養護教諭と相談して休息時間を確保してもらえたら」。
わがままと受け止められる現状
聴覚や視覚過敏の症状がある人たちが、互いの悩みなどを語り合う場もある。東京都目黒区で7月末に開かれた会には4人が参加。近況報告後、愛用の耳栓を紹介するなど交流した。
神奈川県内の男性公務員(48)は、2年ほど前から突発性難聴で左耳で高音が聞こえなくなり、聴覚過敏も併発した。ポリ袋のガサガサという音が苦手で、耳に刺さるような痛みを感じる。体調が悪いときはあらゆる音が苦痛で、食事もとれず横になる日も。
会では、職場で騒音を抑えるヘッドホンを着けたいと訴えたが、理解を得られなかった体験などを語った。「わがままだととらえられてしまうのが現状。当事者会は、苦しみを持つ者同士が忌憚(きたん)なく話せる安らぎの場所だ」と説明する。
日々の生活が耐性をつける治療に
愛知県医療療育総合センター中央病院子どものこころ科の小野真樹(まさき)部長(53)は「音や光など特定の感覚刺激に対して、生まれつき通常より強く反応してしまう人もいれば、思春期に近い年齢になってから、人間関係などのストレスがきっかけで、過敏性が強くなる人もいる」と話す。
感覚刺激への反応は、成長の過程でさまざまな経験を通して変化するという。この過程で掃除機の音や視線など拒絶する必要がないものに恐怖を感じるようになることも。自閉症などの発達障害がある人にみられる特徴の一つだが、「感覚過敏=発達障害」ではない点には注意が必要だ。
症状を緩和するポイントは、苦手なことを受けとめつつ、少しずつ耐性をつけること。「許容範囲を少しだけ超えたところに挑戦して成功すると、過敏性が解消できることもある」と小野さん。例えば音に過敏だからと、大きな音を聞かせないでいると耐性はつかない。一方、無理な挑戦で症状が悪化することもあり、さじ加減が重要。「病院での治療で全てが解決するわけではなく、日々の生活が治療になる」と話す。
また、症状と向き合う子どもが自分で考えて決めるように手助けすることも重要だ。泊まりの行事への参加については、保護者がさまざまな選択肢を示し、子どもが決断することを助けると良いという。
「例えば、『キャンプファイアに参加しない選択肢もある』といった具体的な情報や支援方法を伝える。本人が配慮はいらないと言ったら、困ったときの対応を伝えて」とアドバイスしている。
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