少年野球の負担を軽減 ユニホーム作らず道具も貸し出し「入団のハードル下げたい」〈野球のミライ〉
チームTシャツと短パンでプレー
川崎市高津区を拠点に、5年前に発足した「パイラスアカデミー」。この少年野球チームにはユニホームがない。子どもたちが着ているのはチームTシャツと短パン。中には私服で白球を追う子もいる。スパイクの着用も任意だ。相手チームの理解を得て、試合もこの格好で臨んでいる。練習は原則週1回のため、約3000円のチームTシャツを複数枚購入する必要もない。
米国の大学に進学し、現地の野球部でプレーした小林巧汰代表(30)は「向こうでは短パンでの練習が主流で、十分野球はできる。おそろいのユニホームに加え、ベルトも購入すれば1万円以上の費用がかかる」と説明する。知人が経営する用具メーカーから提供を受けたグラブの貸し出しもしている。
従来通りなら費用は年間7万円超
玩具大手「バンダイ」が小中学生の親を対象に2019年に実施した調査では、野球の年間平均費用は7万4931円。サッカー、テニス、水泳、ダンス(チアリーディングを含む)を合わせた人気5競技の中で最も高く、2位のサッカーを1万8000円余り上回った。
さらに、近年は物価高のあおりや機能性の向上などで野球用具の高価格化が一層進んでいる。総務省の小売物価統計調査によると、今年4月の大人用軟式グラブ(中級品)の全国平均は1万4984円で、9年前の1.4倍となっている。
小林さんは「道具をそろえなければいけないということも、野球離れが進む理由」と指摘。保護者から「グラブは買った方がいいのか」といった問い合わせが多く寄せられるといい、「とにかく野球をスタートするハードルを下げたい」と力を込める。
障壁なくしプロ人気を追い風に
2021年に発足した「エンジョイベースボール春日部少年少女軟式野球クラブ」(埼玉県春日部市)も、入団したばかりの選手にバットやグラブを貸し出している。さらに、きょうだいで入団すればクラブ活動費を割り引くほか、お茶出しなどをする「お茶当番」を廃止するなど、負担軽減に取り組んでいる。
野球日本代表や米大リーグ大谷翔平(ドジャース)の活躍もあって球界は盛り上がりを見せるが、同クラブの矢田部義行GM(54)は「興味を持つ子は増えただろうが、入団者の増加といった大きな影響はない。一歩踏み出すためにどこかにハードルがある」と冷静に現状を見つめる。野球を始める障壁を取り除くため、現場の模索が続いている。
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