肌触りのよいルームウエアを、子ども優先になりがちな産後のママに 授乳しやすい工夫も

 出産後の母子を支える川崎市中原区の産前産後ケア専門宿泊施設「ヴィタリテハウス」が、館内で母親が身にまとう授乳もできるルームウエアを、オーガニックコットンの衣料メーカー「アバンティ」(東京都新宿区)と共同で開発した。肌触りの良い素材にこだわり、1年近くかけて話し合い、改良を重ねて完成した。「全てのママに幸せを」を理念に、「産後はつい子ども優先になってしまいがちだが、良いものに触れてもらって、子育てのスタートを幸せな記憶で満たしてほしい」との願いを込める。

写真 産後ケア施設

「肌触りにこだわったルームウェアを見せる(左から)アバンティの奥森社長とヴィタリテハウスの浜脇施設長と鶴野代表=川崎市中原区で

写真 ルームウェア

新しく発売されるルームウエア(7分袖カシュクールワンピース)

自身の出産を機に産後施設を立ち上げ

 ヴィタリテハウスは2023年4月に開館。現代アートのギャラリーを運営していた鶴野ゆかさんが自身の出産を機に「産後の母親がほっとひと息つける心地良い空間を提供したい」との思いから立ち上げた。産後12カ月までの母親を対象に、宿泊しながら授乳や赤ちゃんの沐浴の指導、母親のカウンセリングなどを受けられる。

 これまでヴィタリテハウスでは、アバンティが手がける「プリスティン」ブランドのオーガニックコットンの赤ちゃん向け肌着を利用者に館内着として貸し出していた。その手触りと品質の良さから母親向けにも提供したいと考え、アバンティ側に声かけをして開発につながった。プリスティンでは女性向けのルームウエアはこれまでにも販売していたが、産後の母親向けに特化したルームウエアの開発は初めて。アバンティの奥森秀子社長は「すてきなきっかけをいただいた」と話す。

写真 産後ケア施設

「子育てのスタートを幸せな記憶で満たしてほしい」との願いを込めて共同開発した

機能性と美しさを両立させて

 ルームウエアはワンピースタイプで胸元の重なる部分にスナップボタンを付け、授乳の際に付け外しやすくした。横になる時間も多いため、ゆとりあるデザインにした。

 特にこだわったのは素材。児童労働がない綿畑で育ったオーガニックコットンを使う。さらに、今回使う天竺生地の特徴として、表側がなめらかな肌触りになることから、逆転の発想で生地の表と裏をあえて逆に使うことで、肌に触れる側をよりスムーズでやさしい手触りになるように工夫を施した。産後は汗をかきやすいため、ガーゼ素材で深めの背当てを付けた。奥森社長は「体への気遣いとともに、授乳も優雅にしてもらえるよう、機能性と美しさを両立させた。そして極上の気持ちよさを追求しました」とこだわりを語る。授乳が終わっても着ることができる。

 首元後ろの表示は縫い付けるラベルでなくプリントにし、英語で「全てのママに幸せを」とのメッセージをしたためた。ヴィタリテハウスの浜脇文子施設長は「自らのことは後回しにしがちな時期に、良い素材の服で自分自身を大切にしてほしい」と願う。

 ルームウエアはフリーサイズで税込み24,200円。希望者はヴィタリテハウスでも購入できるほか、プリスティンのホームページでも購入できる。

 産前産後の母親の心身ケアや育児支援などの目的で、公的事業だけでなく民間サービスでも全国に広がる産後ケア施設。「ヴィタリテハウス」を運営する「ヴィタリテ」(東京都港区)の鶴野ゆか代表とベテランの助産師でもある浜脇文子施設長に、開館した経緯や子育て中の母親への思いを聞いた。
産後ケア施設

産後の母親がほっとひと息つける場になれば」と願う (左から)ヴィタリテハウスの鶴野代表と浜脇施設長

施設の特徴は。

鶴野さん 高い天井に、光と風を多く取り入れた施設で、いるだけで心地よい場を目指しています。「ヴィタリテ」はフランス語で「生命の力」。以前アート関係の仕事をしていた経験から、アート作品を飾っているので、心を癒やしてもらえたらと考えています。

食事やお茶をできるリビングルームでは、孤独な「孤育て」になりがちな現代に、人とつながれる貴重な時間を提案しています。

浜脇さん ここは母と子にとっての「おうち」。赤ちゃんの人生スタートの場として、病院などのルールや決まりに生活を合わせるのではなく、母と子が主役にほっとひと息つける上質な時間と空間を提供したいです。近隣の農場で採れた新鮮な野菜や果物を豊富に使った、産後の心身を気遣った食事も人気です。

ー開館したいきさつは。

鶴野さん 私は44歳の時に第1子を、48歳で第2子を産みました。生まれた赤ちゃんは本当にかわいく「こんなすばらしい世界があったのか」と衝撃を受けました。一方で、虐待などのニュースは後を絶たず、赤ちゃんとの幸せな思いを享受できない母親もいるのは事実。母子のためにどうにか良い環境を作りたいという思いから施設を立ち上げました。

ー産後うつの防止など、産後ケア施設の役割や意義が重要視されています。

浜脇さん 昔は大家族が多かったのに対し、現代では夫婦2人きりの子育ても多く、社会的にも家族の形や機能が変わっています。肉体労働である育児を母一人で担う場合も多く、新しい価値観で子育てを支える仕組みは必要です。

子育てをめぐる情報があふれる中で「これだけ情報があっても、私の子育てに必要な情報は足りない」という利用者の声も多く聞きます。リアルな場で実際に五感を使って触れたり見たりして多くの人と関われる場になればと思います。

鶴野さん 子育てに対する心身の負担は大きく、2人目以降を諦める人は少なくないと思います。利用者から「ヴィタリテハウスがあるから2人目の育児を頑張れる」と言われたのはうれしかったですね。いつでも帰ってきて、安心でき、相談できて、預けられ、ゆっくり休める実家のような場所であり続けたいと思います。

写真 産後ケア施設

赤ちゃんとゆったり過ごせる個室

ヴィタリテハウス

ヴィタリテハウスはシングルタイプのスタンダードプランが食事付きで1泊税込み68,200円、一人でも家族と一緒でも滞在できるスーペリアプランが食事付きで1泊税込み88,000円。職場復帰応援プランでもある日帰りプランは税込み27,500円。

プリスティン(PRISTINE)

1996年にデビューしたアバンティの自社ブランド。「気持ちのいい毎日のために、手を掛けすぎない、手を抜かない。」をコンセプトに、糸から製品まで自社の企画・デザインにて開発し、日本国内で生産。暮らしに寄り添う、サステナブルなオーガニックライフスタイルを提案している。使う素材は環境にも素肌にも気持ちのよいオーガニックコットンと、土へ還る天然素材。健やかな素材本来の色と風合いを生かし、地球に負荷をかけず、日本の職人が引き継いできた伝統や技術によって作られている。ものづくりの工程では、人権と環境に配慮したエシカルな方法で作ることにこだわり、CARE認証(第三者ESG認証)も取得している。

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