「不適切な性教育」の記述、やっと削除 元教員「ここから立て直したい」
柏崎智子 (2019年3月29日付 東京新聞朝刊)
東京都教委「性教育の手引」から、16年前に都立七生養護学校(現七生特別支援学校)で行われていた性教育を「不適切」と非難するくだりが、ようやく消えた。「ここから性教育を立て直したい」。28日、都教委の会議を傍聴した同校の元教諭、日暮(ひぐらし)かをるさん(70)は胸をなで下ろした。
特別支援学校「性をきちんと教える必要があった」
「男女の性器の名称の入った『からだうた』を歌わせた」「膣(ちつ)付きの子宮内体験袋、男性器から注射器で白い液体を噴射する射精キット等を使用していた」
「これだけ読むと『何やってるのか』と思いますよね。悔しかった」。同校には知的障害のある小学生から高校生までが通う。「家庭的に恵まれず安心感や自己肯定感のない生徒も多かった。母親を求める気持ちや思春期の性衝動、体の変化への拒否感が混ざり合い問題を起こす子もいた。性についてきちんと教える必要があった」と振り返る。
「子宮内体験袋」を作ったのは、生まれて良かったと感じてもらうため。クッション入りの大きな袋に子どもが入り、「生まれるよ」と合図すると、ほかの子どもたちが「がんばれー」と応援。狭い管を通り外へ出ると、みんなに「おめでとう!」と祝福される。
「射精キット」は、夢精をおねしょと勘違いしパニックになる子どもに、大人になるための体の仕組みだと理解させ、安心させる教材だった。
「大きな一歩。先生たちが実践できるよう支えたい」
保護者に感謝され、他校の先生から参考にされたが、2003年、都議会が問題視。都教委は教材を没収、校長を降格処分に。性教育への機運はしぼんだ。日暮さんらは教育への不当介入などとして都などを訴え、13年、都などに賠償を命じる判決が確定したが、手引の「不適切」の記述は消えず重しのままだった。
「今回、『不適切』が消えたのは大きな一歩。先生たちが自信を持って実践できるよう、支えたい」
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