新型コロナで不安な妊婦 厚労省が企業に「休みやすい環境」要請 実効性に疑問の声も
大野暢子 (2020年4月4日付 東京新聞朝刊)
新型コロナウイルス感染が妊娠に与える影響に不安が高まっていることを踏まえ、厚生労働省は妊婦が休みやすい環境の整備を企業側に要請した。だが、環境整備は企業任せの色彩も濃く、野党は実効性に疑問を投げかける。通勤や仕事で人と接する機会が多い妊婦からは、働き方の見直しを望む声が上がっている。
「胎児の異常や死産、流産を起こしやすい報告はない」
厚労省は1日、感染の妊娠への影響に「過度な心配はいらない」との見解をホームページに掲載。妊娠後期に感染しても、重症度は妊娠していない人と変わらず、胎児の異常や死産、流産を起こしやすいとの報告はないと説明している。
経済団体と労働団体に対しては、コロナ感染防止を理由に休んだ妊婦への手当支給を含む体制づくり、在宅勤務の促進などの配慮を求めた。今後は自治体を通じ、妊婦向けの冊子や妊婦1人当たり2枚の布製マスク配布も始める。
安全に産めるのか、転院先は見つかるか…尽きない不安
国会で妊婦のコロナ対策を取り上げてきた国民民主党の矢田稚子(わかこ)参院議員は、企業側が要請に応じて環境整備したかどうかを点検する仕組みがないことを問題視する。企業が妊婦に配慮する内容は労使協議に委ねられており、労組のない企業では実現性に疑問があるとも指摘。こうした問題点を巡り、週明けにも厚労省に追加対策を要望する。
東京都内の不動産会社で働く妊娠9週目の30代女性は「政府は企業に対し、妊婦の出勤停止や休職容認を強く訴えてほしい」と語る。片道1時間かけて電車で通勤。受け付け業務で不特定多数の人と会う。職場では在宅勤務や有休取得の環境は整っていない。
病院の安全対策を求める声もある。厚労省は3月、妊産婦の感染を防ぐため、都道府県に新型コロナ感染患者を診察しない医療機関の設定を要請したが、そうした措置を取るかどうかは自治体の判断次第だ。都内の妊娠7カ月の30代女性は「安全に産めるのか。転院せざるを得なくなった場合、受け入れ先が見つかるか不安だ」と漏らした。
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