性教育「世界のスタンダード」は?〈性教育10の悩みに答えます⑩〉
東京すくすくは、開設3周年を記念して、気になるテーマを楽しく学べるオンライン講座を企画しました。第1弾は「性教育」です。講座〈教えて!サッコ先生 性教育10の悩みに答えます〉で取り上げた質問を、記事でもテーマごとに紹介します。
質問10. 世界各国では性教育、今どうなってるの?
日本でも学校や家庭での性教育の重要性が認識されてきています。世界各国ではどんなふうに行われているのでしょうか。
コンドームの使い方を教えない日本
サッコ先生 私も世界中のことを自分で見て知っているわけではありませんが、各国の性教育を見てきた大学生から聞いた話では、性的同意や性の多様性など人権教育のことを性教育と位置づけている国も多いそうです。発展途上国では、避妊や性感染症を防ぐ対策など貧困対策として性教育が行われています。
では、日本の性教育は何がどこまでできていて、今後何に取り組まなくてはいけないのでしょうか。日本の学習指導要領では、小学校2年生でおへそについて学び、4年生で月経・射精について学びます。6年生では第二次性徴も学びますし、HIVやエイズなどのコトバも出てきます。中学1年生になると、心の成長として「異性を好きになります」と教科書では書かれています。中学3年生では性感染症予防のためにコンドームを使いますということが教科書に文字では書かれていますが、イラストもなければ着け方の説明もないんですね。
小学5年生の「人の誕生」では、子宮の中で赤ちゃんが育って、女性の体の中から生まれてくるということは学ぶのですが、じゃあどうやって精子と卵子が一緒になるのか、という話は中学3年生になっても学ぶ機会がありません。性感染症の予防としてコンドームについては教えるのに、性行為について触れない、という謎かけのような状況になっていますから、指導要領を守らなくてはと真剣に考えている先生ほどちょっと厳しい状況なのです。
すくすく それでは本当に心もとないですね。
サッコ先生 高校では避妊について学ぶのですが、たとえば高校に行かないような状況の子どもたちにこそ、避妊の情報をしっかり知って、社会に出ていってほしいと考えると、義務教育の中で教える必要がある、という問題意識を持つ先生もいます。そういう先生たちが、私たちのような外部講師を招いて、学習指導要領の縛りから離れて、伝える取り組みも広がっています。
私は中学3年生に講演する際にも高校生向けの「つながるBOOK」のような冊子を配るなどして、正面からしっかりした性教育がしたいなと思ってやっています。
ネットにも良質な情報はあります!
すくすく 今の時代は、ネットでゆがんだ性の情報に触れることがとても心配です。
サッコ先生 そうですね。性の情報もYouTubeなどで発信する人が増えていて、逆に正しい情報にたどりつくツールにもなります。もちろん発信されている情報には正しいものとそうでないものがありますが、オススメできるものとしては、タレントのシェリーさんの「シェリーのお風呂場」という性教育のチャンネル。私が監修させていただいています。
あとは、私も中学3年生から高校生向けに性教育の講演会でふだんお話している60分の内容を10分に分けた動画もYouTubeにあげています。#めちゃ大事、で検索すると、「産婦人科医の性教育」という動画があります。
私が外部講師として今、こんなお話を学校でしてるんだなというのを見ていただけるかなと思います。
養護教諭の先生は強い味方なんです
すくすく ティーンの子たちにとって、サッコ先生のような専門家で、いつでも相談できる人がいるのは重要な気がします。親や身近すぎる先生には話せないことでも、伝えやすかったりするのではないでしょうか。
サッコ先生 海外では「ユースクリニック」という若い人たちが性についての相談を堂々としにいけるクリニックがあります。私もスウェーデンで見学してきました。
スウェーデンは、性交同意年齢(性的な行為に同意する能力があると認められる年齢)が15歳で、そこまでにしっかり性のことを学んだ上で、15歳からは「あなたたちには性行為をする権利があるよ」というスタンスで、避妊やメンタルのサポートなどが無料で受けられます。親の許可がなくてもOKだし、親と一緒にでも大丈夫です。日本でもこの先そうしたサポートが必要ではないか、という議論が少しずつ始まっているところかなと思います。
そして、性に関して相談できる身近な大人としては、実は学校の保健室にいます。養護教諭の先生は強い味方になってくださると思いますので、保護者の皆さんも養護教諭の先生を頼ってみてもいいのではないでしょうか。
高橋幸子(たかはし・さちこ)さん
「趣味・性教育、特技・性教育、仕事・性教育」の産婦人科医。愛称は「サッコ先生」。埼玉医科大で医師として思春期外来などで診察に当たるかたわら、全国各地の学校などで年間120回以上性教育の講座を行う。家庭でできる性教育も支援しようと、サイトの監修や本の出版もし、多角的に活動する。著書に『サッコ先生と!からだこころ研究所 小学生と考える「性ってなに?」』(リトルモア)。
なるほど!
グッときた
もやもや...
もっと
知りたい
性って学校でなかなか詳しくはわからないものだったので、このように安心安全な知識を発信してくれる先生がいるのはとても助かります。まだまだ知らないことだらけなんだな〜と改めて思いました。
男子たちがプールの授業のときに冷やかしてきたり、親もそういう話をしてこなかったので性ってあんまり良くないものなのかなと思っていたので、考え方が180度変わった気分です。
このような情報を発信し続けることは未来の子どもたちは親の役に立つことだと思いますので、これからもがんばってください!