子どもへの性教育 理解できそうな言葉で、繰り返し〈瀧波ユカリ しあわせ最前線〉8

瀧波ユカリ しあわせ最前線

ちょっとでも耳に入っていれば

 「子どもへの性教育って、いつから始めるの?」「どんなことから教えたらいい?」と、よく聞かれる。

 私はこう答える。「その時に理解できそうな言葉で、言えること全部言えばいい」

 たとえば3歳くらいなら、おもちゃの取り合いなどが起きる。そこで、お友だちの大切な持ちものを借りる時は「かして」と言おうね、そして大事に使おうね、と話すついでに、こんなことも言ってみる。

 「からだも同じでね。お友だちにタッチする時は、気をつけよう。さわっていい?とか、手をつないでいい?と聞くのは、とてもいいこと。さわる時は、やさしく大事に。いやがっていたら、やめる。おくちやむね、おしりはさわらない。自分がさわられる時も同じ。いやなら、いやだ、やめてと言っていい。いやなタッチ、へんなタッチをされたら、お母さんに話してね」

イラスト

イラスト・瀧波ユカリ

 これはつまり、性的同意とプライベートゾーンと自分の守り方の話。長くて聞いてもらえないのでは、って? ちょっとでも耳に入っていれば、よし。折に触れて繰り返し話せば、いつかは理解する。

一事が万事この調子で育てると

 子連れ帰省したら、こんな説明をしてみる。「知ってた? おばあちゃん、おじいちゃんはお母さんを育てた親で、おばさんはお母さんのお姉さん。おばあちゃんとおじいちゃんが出会って結婚して、おばさんとお母さんが生まれて、一緒に暮らしてたの。そしてお母さんがお父さんと出会って、あなたが生まれたの」

 これは生物が繁殖することと、自分もその営みの一部であるという話。さらにこう続ける。

 「あなたもいつか、だれかと出会って結婚して子どもを持つかもしれない。でも結婚しなくてもいいし、子どもを持たなくてもいい。好きになるのは、男の人でも女の人でもいい。生き方は自由だよ」

 これはSRHR、「性と生殖に関する健康と権利」の話だ。

 性交や出産については、年齢に合った絵本を一緒に読むのがいい。言葉だけで説明するより、ずっとわかりやすく親しみやすい。

 「あの子は女の子なのに気が強い」とか「男の子がおままごとをするのは変」など古い価値観をどこかから持ってきた場合は、「女なのにとか男なのにとか、関係ないよ」と丁寧に説明する。

 一事が万事この調子で、娘を育ててきた。今では彼女は、新生児遺棄で母親逮捕、というニュースに「父親は?」と突っ込みを入れる。その横で私は「そうだ父親どこいった!」と合いの手を入れる。性教育とは、現在進行形なのだ。

【前回はこちら】「主婦のかたわら」「働くママ」? どのお母さんも働いている

写真

瀧波ユカリさん(木口慎子撮影)

瀧波ユカリ(たきなみ・ゆかり)

 漫画家、エッセイスト。1980年、北海道生まれ。漫画の代表作に「私たちは無痛恋愛がしたい~鍵垢女子と星屑男子とフェミおじさん~」「モトカレマニア」「臨死!! 江古田ちゃん」など。母親の余命宣告からみとりまでを描いた「ありがとうって言えたなら」も話題に。本連載「しあわせ最前線」では、自身の子育て体験や家事分担など家族との日々で感じたことをイラストとエッセーでつづります。夫と中学生の娘と3人暮らし。

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