高校受験生の夏休み、見守るポイントは? 保護者の心配は「部活から切り替えられるか」「モチベーションを保てるか」

夏の間に「勉強の体力」つける
「夏休みは基礎力固めに加え、『勉強の体力』をつけてほしい」。個別指導の学習塾「明光義塾」(東京)で教室長として東京都内の杉並エリアを統括する岡本拓馬さん(35)は、そう力を込める。「中学の成績は受験に大きく関わるため、2学期は学校のテスト対策が中心になる。行事も多く、秋は集中して勉強する時間が取りづらい」と説明。「夏の間に勉強に向かう精神力や継続力をつけておくと、秋以降、多忙な中でも受験勉強に時間を充てること、集中することができる」と語る。

「夏休みは『勉強の体力』をつけてほしい」と話す明光義塾の岡本拓馬さん
夏が大事だということは保護者も重々承知している。「受験生の夏休みの過ごし方」について、同塾が全国の中学3年生の保護者1000人を対象に6月に行った意識調査では、80.8%が夏休みの勉強が受験に「影響すると思う」と回答した。
勉強の質と量を上げるためには
だが、子どもはどうか。岡本さんは「動機づけがなければ、勉強の質も量も上がりにくい」と指摘する。受験自体が初めての場合、「受験勉強とは何か」「何から始めたらよいか」のイメージが持てないことが多い。勉強のやり方や受験までの道筋を示し、志望校や気になる高校の見学会などに参加する機会を設けることが後押しになるという。
具体的な道筋は「高校受験では、6~7割は1~2年生の学習内容から出題されるので、夏のうちにその内容を定着させること」。その後、秋は2学期の学習内容を確実に押さえながら、冬にかけて応用力や実戦力をつけるイメージだ。
ゲームは時間を制限するよりも
調査では、保護者が夏休み中の受験サポートで最もストレスを感じるのは、「子どものモチベーション低下」が34.4%と最多で、「スマホやゲームの管理」が続いた(=冒頭のグラフ)。また、子どもが部活動に所属する保護者の63.1%が、引退後の切り替えに「不安を感じる」と答えた。
「引退して余裕ができた時間を動画視聴やゲームに充ててしまう生徒もいる」と岡本さん。ルール作りが必要だが、「スマホ△時間、ゲーム□時間」と制限するより、一日の学習スケジュールを決め、それ以外は余暇とする方が「子どもの感覚としては取り組みやすい」と助言する。夏休み以降も部活動が続く受験生が4割近くおり、「その場合は20~30分の隙間時間を暗記に充てたりと、より計画的に過ごす必要がある」。
意欲低下のサインが見えたら
岡本さんは意欲の低下のサインとして、反抗的な態度や家族を無視するような姿、塾などの遅刻・欠席の増加を挙げ、「頭ごなしに責めず、『困ってることある?』と寄り添った言葉をかけて」と求める。
子どもなりに「1時間休憩したら勉強を始めよう」と考えている場合もあり、「いつになったら勉強するの?」とせかさず、取り組み始めたタイミングをとらえて「頑張ってるね」と声をかけてほしい、という。直接的な言葉ではなく、「ずいぶん長い時間やってるんだね」「アイス食べる?」といった心配や応援の気持ちを込めた言葉も、「子どもは頑張りを認められていると感じ、前向きに学習に向かえる」。

高校受験生への声かけについてアドバイスする明光義塾の岡本拓馬さん
岡本さん自身も、自分が受験生の頃に父親に言われてうれしかった言葉として「何でそんなに勉強してるんだ」というひと言を挙げる。「勉強する姿をみてくれているのがわかり、承認されている気持ちになった」と振り返る。
保護者がストレスをためない
とはいえ、思春期真っ盛りの年頃、保護者以外の第三者からの言葉の方が素直に響くこともある。岡本さんは「子どもの様子に違和感や不安を覚えたら、学校や塾の先生に最近の様子を尋ねたり、ハッパをかけてもらうよう頼んだりするのも有効」と話す。保護者がストレスをためないために「『この子の人生なんだから』と割り切って、あえて目を離す時間もつくって」と提案する。
大事にしたいのが生活リズムだという。塾通いなどで夜型になる生徒が多いが、「起床や就寝時間は、学校のある時とあまり変えない方がいい」と岡本さん。勉強中心になり、体を動かさないことがストレスになる子もいるとし、「特に運動部で日常的に運動していた子は、今までの習慣を大切にして、適度に運動する時間をつくるといい。走ったり仲間とバスケットをしたりは、むしろした方がいい。勉強するにも体力が必要ですし、適度な息抜きになりますから」と勧める。
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明光義塾・岡本拓馬(おかもと・たくま)さん

1990年生まれ。個別指導の学習塾「明光義塾」で教室長として東京都内の杉並エリアを統括。生徒や保護者の支援、講師へのアドバイスや取りまとめを担当する。
筆者 今川綾音

1978年、埼玉県生まれ。2005年中日新聞社入社。2017年から、子ども・子育て関連の取材を担当。現在は東京すくすく部の記者として、「子育てをする側の状況はどうか」という視点で、成長・発達にまつわる悩みや子どもの事故、産後クライシスや社会的養護、学童保育の取材を続ける。2021年9月から3年間、「東京すくすく」の2代目編集長を務めた。小中高生3児の親。
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