子どもが盗撮の被害者・加害者にならないために 川口市のクリニックが公開セミナー DBS、カメラの歴史、包括的性教育…多様な切り口で

福田真悟 (2026年4月10日付 東京新聞朝刊)
 性加害者の再犯防止プログラムに取り組む「西川口榎本クリニック」(埼玉県川口市)が、子どもの盗撮被害を防ぐための公開セミナーに力を入れている。さまざまな分野の専門家を招き、対策を検討。副院長で精神保健福祉士の斉藤章佳さん(46)は「全ての人が当事者性を持つことこそが、性加害を減らすのにつながる」と話す。
写真

学校内の盗撮を防ぐ対策について語る末冨教授(右)と斉藤章佳さん=川口市で

防犯カメラとDBSだけでは守れない

 きっかけは、昨年6月に発覚した全国の教員グループが児童の盗撮画像をSNSで共有した事件だ。被害の深刻さを踏まえ、クリニックが開いている月1回のセミナーでは、それ以降、3回にわたって盗撮の問題を取り上げてきた。

 昨年12月のテーマは「校内盗撮」。子どもの人権擁護に取り組む日本大の末冨芳教授が効果的な対策を説いた。

 子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴の確認を求める「日本版DBS」や防犯カメラについて、末冨さんは「大事だが、それだけでは守ることはできない」。子どもの利益を最優先した判断ができる指導者を育てる研修制度など「危害を許さない文化をいかに徹底できるかにかかっている」と強調した。

スマホのカメラの普及が欲望を刺激

 今年2月には、ジェンダーの視点から広告を分析する写真研究者の小林美香さんを招き、カメラと写真の歴史から「撮りたい欲望」を掘り下げた。

 小林さんは、19世紀にカメラが誕生した当初から異国の女性のヌード写真が人気を博すなど、性的な欲望との結び付きがみられたと指摘。他者に気付かれず撮影できるスマートフォンのカメラの普及が「のぞき見したいといった欲望を刺激している」などと説いた。

気付かなければ…という認知の歪み

 多様な切り口でセミナーを企画する斉藤さん。「違った視点を入れていくことで何か新しい視点が生まれないか」との狙いがある。

 盗撮する人には、気付かれなければ被害者は傷つかないとの「認知の歪(ゆが)み」があると指摘。「無断で人に撮られることの暴力性をどんなふうに伝えていけばいいのかが大きなテーマ」

 セミナーでは、性暴力の防止やジェンダー平等など人権尊重を基盤とする「包括的性教育」の重要性を訴える。書籍でも啓発に取り組み、3月には「10代のための『性と加害』を学ぶ本」(時事通信社)を刊行。クリニックで取り組んでいる加害少年への性教育の内容を漫画で分かりやすく伝える。「性加害や被害を他人ごとでなく、自分と地続きにあるものとして捉え直す作業にチャレンジしてほしい」と語った。

◆次回は4月22日「包括的性教育」

 西川口榎本クリニックでは共著者の助産師、桜井裕子さんを招いたセミナー「子どもたちの性を考える『加害者臨床×包括的性教育』」を4月22日午後3時から開く。参加の事前申し込みは、ファクスやメールなどで18日まで受け付ける。無料。問い合わせは西川口榎本クリニック=電話048(240)1051=で受け付けている。

元記事:東京新聞デジタル 2026年4月10日

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