将棋の藤井プロで話題「モンテッソーリ教育」家庭でもできる!
6歳までの「敏感期」を逃さない
「梨があるけど、むいて食べる?」。神奈川県逗子市の小野寺愛さん(39)が声をかける。長女で小学4年の桃さん(10)は、自分の包丁を手にすると4等分して皮をむき、食べやすくカット。あっという間に皿に盛り付けた。踏み台を置いて調理台の前に立った次女で同2年の杏(あん)さん(7つ)は、まだスムーズにはむけない。右手の親指の動きがおぼつかないが、愛さんはすぐに手出しはせず見守った。
モンテッソーリ教育は、イタリア初の女性医師マリア・モンテッソーリが100年以上前に提唱。6歳までの乳幼児には何かに強い興味を持ったり、繰り返したりする「敏感期」がある。大人がそれを見逃さず、必要な環境を整えることで、子どもは自然に能力を身に付けていくという考えだ。
「やりたい」尊重、大人は援助に徹する
愛さんは、桃さんが3カ月のときこの考えに出合った。働いていた非政府組織(NGO)「ピースボート」の活動を通して知り、家庭でも工夫した。
包丁を使い始めたのは、桃さんが3歳、杏さんが 2歳のとき。長男の玄君(3つ)は、卵を割って小麦粉や牛乳と混ぜてパンケーキの生地を作るのが大好き。「危なかったり、こぼしたり。かえって大変だけど『やりたい』と言った時にどうできるかを考える」と愛さん。大人は、子どもの内なる要求を満たせるような援助に徹する。はさみや針も興味に合わせて使わせる。「使い方をゆっくりと見せることがポイント」と話す。
子どもが縁石の上を歩きたがるのも…
大人が困るような不可解な行動も、敏感期によるものと分かれば納得がいく。例えば、子どもは縁石の上を歩きたがる。「どの子どもにも見られる傾向で平衡感覚の敏感期」とモンテッソーリ教師の実習園「聖アンナこどもの家」(東京都町田市)副園長の野村緑さん(69)は説明する。「歩行をより確かなものにするため、自然から与えられたプログラムです」
園では子どもサイズの生活の道具や五感を働かせる教具を用意。自由に選んで好きなだけ使うが、待つことを学ぶため1個ずつしか置かず「次の人のために元通り返す」といったルールもある。縦割りのクラスで思いやる心も育つという。
卒園児の共通点は「集中力と器用さ」
藤井四段は3歳で地元の幼稚園に入園。夢中になったのは、色のついた画用紙を編んで作る「ハートバッグ」だった。来る日も来る日も作り続け、持ち帰った数は100個ほど。祖母の家に残る1個には、平仮名で名前も書かれている。
国際モンテッソーリ協会公認教師の深津高子さん(62)は「モンテッソーリ教育は自分で選び、集中して達成するというプロセスを大切にします。園の先生は『ああ、きょうもやるんだな』と見守り、活動を尊重したのでしょう」と推測する。「集中力がある」や「手先が器用」は卒園児に共通する特徴という。
野村さんは藤井四段の驚異的な終盤力に注目する。「追い込まれてもあきらめないのは、自分には乗り越える力があると信じているから。自分で決めて実行することを繰り返す中で、自己肯定感も育まれたのだと思う」と話す。
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