代わりの先生が見つからない 学校現場から「人繰り綱渡り」の悲鳴 子どもたちに直接の影響も  

原尚子、小林由比 (2019年10月20日付 東京新聞朝刊に一部加筆)
 本紙のアンケートで明らかになった関東1都6県の公立小中学校の教員不足。教育現場からは、急な休退職や産育休取得などによる欠員が常態化する一方、代わりの教員が見つからず「綱渡りの人繰りでしのいでいる」などと悲痛な声が上がっている。
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臨時の教員を募集する自治体のポスター

算数の少人数授業が中止に

 東京都葛飾区のある小学校では今年5月の大型連休明け、学年主任が出勤できなくなった。職場の人間関係などに悩み、通院もしていた。算数の少人数授業を担当するはずだった教員が後任となり、少人数授業は中止に。同校の教諭は「担任を空ける事態は何とか避けられたが、保護者や子どもたちを不安にさせてしまった」と話す。

 各学校現場では欠員を埋めるため、自力で後任を探す事態になっている。アンケートでは「都の名簿からは見つかりにくい状況のため、区や学校で探すことがある」(台東区)、「管理職の人脈が頼り」(江東区)という回答があった。

「副校長が200件電話、見つからず」「後任自分で探せ」

 実際、墨田区の五十代の小学校教諭は「急に先生が休むことになり、副校長が200件電話しても見つからなかった。副校長は電話のかけすぎでけんしょう炎になった。学校自ら探さなくてはならないのはおかしい」と指摘する。「産育休を取ることになった教員が自分で後任を探せと言われた」「がん治療中の校長が担任がいなくなり代替していた」などと明かす教員もいて、代替教員の確保に苦労し、校内の運用で何とか乗り切ろうとしている学校の実態が浮かぶ。

 アンケートでは年度当初は欠員ゼロだった自治体でも、途中で生じていたり、欠員の解消まで七十二日間かかった、といった回答もあった。葛飾区の教員は「ゼロとしている自治体の中にも、実際には欠員が出ている学校はいっぱいあるはず」と指摘する。

正規職員の離職が増え、埋める人材も枯渇

 教員不足の問題に詳しい慶応大の佐久間亜紀教授(教育学)は「教員不足の背景には、この20年ほどで進んだ教員の非正規化と、労働環境の悪化がある」と指摘する。佐久間教授によると、2000年代に入って進められた規制緩和で、教員採用についての各自治体の裁量権が増えたが、教育予算は増えず、給与水準の低い非正規教員を雇い、全体の数を増やす自治体が増加した。

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佐久間亜紀慶応大教授

 一方、正規採用の教員は授業だけでなく部活動、保護者への対応といった多忙さが原因で職場を離れるケースも増加。労働環境の悪化で必要な教員数の不足が増える一方、それを埋める人材も枯渇するという負のスパイラルに陥っている。

 佐久間教授は「教育現場の疲弊が、教員不足という形で子どもたちに直接影響する事態を生んでいる。国は全国の実態を調査するとともに、教員の数を増やし、働き方の見直しができるよう予算を付けるべきだ」と指摘している。

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  • たかこ says:

    退職前に勤務していた学校でも、産休や病気休暇の先生方の代替講師は来ませんでした。その分、他の教員が分け合って仕事をしますが、代わりに担任をした時も、一言も話もなく、保護者用の文章を配るよう言われ、自分の名前がありました。当然するつもりではいましたが、事前に校長は忙しくても、きちんと職務命令を行うべきです。このようなことが、他の教員を疲弊させていきます。

    たかこ 無回答 60代
  • 臨時講師 says:

    臨時講師をしています。
    現在所属している学校は教員数が基本的に足りていなくて、どんどんメンタルを病んで休職に入ってしまう状況。
    統計で見ると、他県と比べて教員数が少ない県のようです。以前住んでいたところには居たTT(勉強が出来ない子にマンツーで授業サポートをしてくれる先生)が居ないし、教員が少なければ当然校務がものすごく多くなります。
    今までは採点とか、授業の準備を持ち帰ることはありましたが、今は校務を持ち帰ってやっている状況。日付が変わっても終わりません。
    そんな状況なので、教材研究や新しいツール(タブレットなど)を使った授業展開を考える余裕なんてありません。
    そもそも教員にタブレットの支給すらないのだから。生徒は勝手に使ってゲームしたり動画を見たりしている。
    前に務めていた県の状況からすると、今の県は本当におそまつ。
    教科の集まりに参加しても、評価の方法を理解している先生が居なくてびっくりします。
    先生が成長するための時間がそもそも作れないので、生徒への最新の指導なんてとてもできません。前の県ではしっかり研修をしてくれていたので、今かなりいろいろできるのは本当に助かっていますけど。自分にも子供がいるので、大丈夫かなぁ、って不安になります。

    臨時講師 無回答 無回答
  • 匿名 says:

    7/5 小2の息子の保護者会に参加してきた。冒頭で、『担任の先生が8/1から他校に移動になります』と伝えられ、唖然。
    どうやら担任の先生は都の制度『移動可能な教員』に該当とのこと。同地区で欠員が出た場合は移動する場合がある。2学期からは社会を専門で見ていた先生が担任になると伝えられた。
    元々、教員の数が少し多めに設定されていた学校で、年度途中で欠員が出た場合は同地区で移動出来るよう補充も兼ねた配員だったのだ。その制度自体は良いかもしれない。
    だが、問題はなぜ、移動の可能性のある先生に担任を任せていたのか、移動の可能性があるなら初めから専科教員にすればよい。
    しかし、そうしない理由にすぐ気づいた。それは担任の先生が、今年大学を卒業したやる気あふれる新人教師だったからだ。
    保護者として、移動調整役の先生に担任にはなってほしくない。でも、一生懸命頑張って下さっていたのを見ていたので残念でならない。悔しい。
    子供には大切な1年。しかし、教師1年目の先生にとっても生涯で大切な一年だったはずだ。これでは非常勤講師と変わらないのではないか。教員不足や現役教員の待遇を確保のため、若手にしわ寄せがいっているのを痛感させられた。持続可能ではないシステムだ。このままだと更に教員がいなくなるだろう。

      
  • 匿名 says:

    掃除と給食は専門のスタッフを雇ってください

    海外では児童に掃除させません。児童労働の搾取と見る向きが多いです。コロナは床に落ちています。トイレには多くのウィルスが見つかっていますし、衛生上の問題もあります。給食も児童に給仕させるのは衛生面でよくありません。

    これらの作業に児童を使うので、教員が管理しなくてはならず、その間休憩も他の仕事もできません。

      
  • 匿名 says:

    今の学校側の過剰サービスをなくせば、教員の負担は減る。特に週の予定表。一週間分の予定や持ち物などを毎週担任が作成する。もし持ち物記入欄に記入漏れがあると、先生の責任になり、抗議の電話がかかってくることさえある。毎日連絡帳に書くので、必要ないと思う。授業の進み具合でどこを学習するかは分かるはず。
    「もう少しでこの単元が終わるから、テストが近いな」と思って、子どもが自主的に、計画的に勉強するようになるのではないかと思う。
     
     
     

      
  • 匿名 says:

    教員が足りないから、誰でもいいから免許を持っていれば埋め合わせのために雇ってしまう状況になっています。ほとんどの講師は、毎年4月1日の時点でどこかの学校に所属します。年度途中の産休や病休代替で講師を探そうと思っても、見つからないのは当然です。
    かつては、民間を退職して講師登録する人や主婦で登録している人がいましたが、今は更新制度があるために免許が期限切れになっていて、急に現場に入ることができなくなりました。2年前までなら、ギリギリ更新期限前の年代の人が残っていましたが、10年分を一周した今は残っていません。
    そのため、とんでもない人が現場に入ってくることがあります。学生たちも、教員不足だから教員には簡単になれる、と思い始めています。採用されている教員を目の前で見て、講師なら誰でもなれる、というレベルではなく、教諭でさえ簡単になれる、という目で見られ始めています。
    1990年代後半から2000年代前半まで、氷河期世代がどれだけ頑張っても教員になれなかった時代が嘘のように、教員は楽に就職できる時代になってしまいました。教員がますます見下される時代になりそうです。保護者からだけでなく、生徒からもです。

      
  • 匿名 says:

    免許更新のための書類が必要で教育委員会にお願いしたところ、更新後は「必ず働くこと」を求められた。期限までに更新しなければ、免許は失効し働けなるが、今すぐ働くことができないと説明するとかなり文句を言われた。
    免許更新には3万円以上の費用がかかり、講習も5日間(もしくは通信制でネット等で講習)。一度、現場を離れたものからすると、負担も大きくまた働きたいという気持ちになりにくい。とりあえず誰でもよいから…という感じで必死に探す管理職は気の毒だと思う。
    非正規教員にはスキルアップの機会もなく、現場で困る場面も多い様に思う。

      
  • 匿名 says:

    女の先生が少ないのを、もしかしたら寂しく思う子もいるかもしれません。

      

教員不足による子どもたちへの影響が出ている事例があれば教えてください

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