学校とは違う学び  子どもの「どうして?」の力を信じる、松戸の探求型スクール〈多様な学びの現場から・1〉

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古い住宅を利用した「探求型スクールC-Quest」で学び遊ぶ子どもたち

 学年で決められた一斉の授業だけでなく、子どもたちが自らやりたいことに取り組んだり、ハンデをサポートしてもらいながら自分を表現したりする「多様な学び」を求める声が高まっています。実践の場も、各地にあります。千葉県松戸市では、探求学習(クエスト)を大切にする教室で小学生たちが紙飛行機を使った”実験”をしていました。

「先におやつ」「遊びがいい」時間割は子どもが決める

 「せーの」。千葉県松戸市の広い庭のある築約70年の日本家屋。子どもたちが一斉に、縁側から室内に向かって紙飛行機を飛ばした。紙飛行機は曲がって急降下したり、舞い上がって欄間に引っ掛かったり。座敷の奥までたどり着いたものもあった。

 3月下旬、松戸市の民間団体「CHIEの輪」が運営する学童教室「探求型スクールC-Quest」での風景だ。子どもたちは集まるとまず、クエスト(探求学習)や個別の勉強、自由時間の時間割を決める。「先におやつ」「遊びがいい」。いろいろな意見が出るが、自然にまとまる。

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探求学習=クエストの面白さ「ものはなんで飛ぶの?」

 この日のクエストのテーマは、理科を意識した「ものはなんで飛ぶの?」。教室代表の阿部剛さん(32)が竹とんぼを手に子どもたちに次々と問い掛ける。

 「どうして飛行機は飛ぶの?」「滑り台の逆!空気が下から上がってくる」。

 「飛んでいるものの仲間は?」「ヘリコプター」「ドローン」とやりとりが続く。

 ひと通りアイデアが出ると次は紙飛行機で実験。それぞれ工夫しながら紙を折り、距離を競った。

 教室の面白さを「自分でやりたいことができる」と小学5年の山田昊汰(こうた)さん(10)。4年海老原元紀(げんき)さん(9)は「おもちゃを持ってこられるのがいい」。学校や学童保育とは異なる自由さが魅力のようだ。

古い住宅を利用した「探求型スクールC-Quest」で学び遊ぶ子どもたち

AI時代に必要な、社会性やコミュニケーション能力を

 10-20年後、今ある職業の半分が人工知能(AI)やロボットに代替されると予測されている。阿部さんは大学生時代に塾講師として子どもたちと触れ合う中で、AI時代になっても自分らしく生きられるよう、社会性やコミュニケーション能力を育む必要性を痛感。2017年に小学生対象の教室を始めた。

 「子どもたちが学ぶ力を信じ、その学びの入り口、一歩外の世界を知る機会をつくる」ことが目標。地元の大学生や知人も協力。異年齢の子が一緒に学ぶことで、他者との違いを思いやる心を育める。

 小学6年の八木麗さん(11)は「学校では習わない実験がおもしろい」と庭木があるここならではの活動を紹介してくれた。梅の木から実を取って梅干しやジュースを作りながら、浸透圧などの科学の基礎も学ぶ。

新型コロナで今はオンライン でも集まることが大切

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う政府の緊急事態宣言を受け、4月半ばからはオンラインで教室を開催。子どもたちは感染防止のため仕方ないと受け止めつつも「友だちと会いたい」「寂しい」と口にする。

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松戸市の「探究型スクールC-Quest」のオンライン学童教室

 オンライン教室では子どもたちが画面に集中し、授業が進めやすいが、阿部さんは「子どもたちの偶発的なやりとりで斬新なアイデアが生まれるには、集まって活動することが大切」と実感している。

こどもの日特集「多様な学び」を考える

 今日は「こどもの日」。新型コロナウイルスの感染拡大で、休校が続く中、子どもの学びについての議論も活発になっています。子どもたちが自らやりたいと思う気持ちを尊重し、探求できる学びの場を記者が訪ね、「学校での一斉授業」だけではない「多様な学び」について考えます。

〈多様な学びの現場から〉

1・学校とは違う学び  子どもの「どうして?」の力を信じる、松戸の探求型スクール

2・宿題も定期テストも廃止 公立校の”当たり前”の改革者・工藤勇一校長の挑戦

3・外国籍の子どもが多い横浜市南区 休校で孤立しないよう、学習支援を続ける信愛塾

4・障害があっても、創作意欲は育つ 自分を丸ごと肯定される練馬のアトリエ

〈多様な学びを広げるために〉

「多様な学び」目指す教育機会確保法の施行から3年 学びの現場は変わったか

「分ける」ことが偏見や差別を生む 障害のある国会議員・木村英子さんが考える「インクルーシブ教育」の意義

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