放課後デイサービスは「最後のとりで」 コロナ休校中も障害児受け入れ 保護者「預けないとわが家は崩壊」
ダンスの時間も、指導員に抱っこをせがむ男児
自閉症や知的障害などがある6歳から18歳までの子どもが学校帰りに通う東京都小平市の「ゆうやけ子どもクラブ」の一室。午後3時半のおやつタイムが終わったのを見計らって代表の村岡真治さん(61)が手をたたいて呼び掛けた。
「さあ、フォークダンスの時間ですよ」。ラジカセから流れる曲に合わせて指導員と手をとりあい、児童らが踊り始めた。普段なら、やんちゃな子まで加わって大きな輪ができるのに、この日輪に加わったのは3人だけ。教室の隅では、小学校高学年の男児が指導員に抱っこをせがんでしがみついて離れない。いつもより手を強く握りしめる子、奇声やうなり声が大きくなった子、すねたように廊下に出ている子もいた。
生活リズム乱れ動揺 「3密」防止に現場も苦悩
「コロナ禍で学校が休みになり、生活リズムが乱れ、子どもたちは動揺している。障害児への影響はとくに大きい」と村岡さん。
クラブでは、緑道や公園での散歩の時間を多くしたり、外から入ってきたときには手を消毒したり、室内を換気したりして感染防止に気を配っている。ただ、「3密」を防ぐように努めても限界がある。不安定な子ほど密着を求めてくるからだ。マスク着用ががまんできない子も多い。現場の苦悩は続いている。
弟をたたく、物を投げる…預けないと親がパンク
学校が長期休みになる時期はいつも午前10時から午後6時まで開いているが、学校の休校措置が延長された4月6日以降は新型コロナ対策で午後1時からの時短運営に切り替えた。通ってくる子は普段の20人から6~7人に減った。
クラブに週5日通っていて、重度の知的障害のある小学4年男児の母親(38)は「休校で、精神的に不安定になってしまった。弟を何度もたたいたり、物を投げたりする。ここに預けないと自分がパンクしちゃう」。障害の程度は軽いが、行動の制御が難しい小学校低学年男児を迎えにきた父親(47)は「クラブがないと、ずっとこの子に付きっきりでいないといけない。わが家は崩壊する」と切実だ。
都内の事業所 活動縮小しつつも休所は8%程度
東京都内71事業所が加盟する障害児放課後グループ連絡会・東京によると、8日現在、休所しているのは5カ所のみで多くは活動を縮小しながら受け入れを続けている。都障害者施策推進部の調べでも都内に約900ある事業所のうち休所は8%程度だ。
「わんぱくクラブ三軒茶屋」など世田谷区内で2カ所の放課後等デイサービス事業所を運営するわんぱくクラブ育成会によると、緊急事態宣言後に通っている子は各6~7人と利用登録者の5分の1。育成会の理事で、重度知的障害者の息子を持つ金本英美さん(57)は「外出自粛が長引き、親の不安も増しているのでメールやビデオ通話でのサポートを始めた。障害児と親の最後のとりでとして休所せず続けたい」と話す。
放課後等デイサービス事業所とは
障害のある小学生から高校生までの児童・生徒が放課後や長期休暇時などに利用できる。ただ、市区町村が高校卒業後も必要があると判断すれば20歳まで通える。小集団での活動やレクリエーションなどを通じ、自立に向けた訓練や居場所づくりがねらい。障害児向けの「学童保育」とも呼ばれる。2012年の児童福祉法改正で制度化され、全国に約1万4000カ所、23万人以上が利用している。
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