衆院選候補者に伝えたい 選挙権はなくても、国の未来をつくるのは子どもたち 長引くコロナ禍のSOS届いていますか
家にも学校にも居場所がない高校生
「自分、いない方がいいんだよね」
高校2年の男子生徒がつぶやいた。夏休み前の7月、千葉市若葉区の子ども食堂。「どうしたの」。運営する田中照美さん(42)が事情を聴くと、生徒は投げやりな様子で語り始めた。
同居する義父と折り合いが悪く、ガソリンスタンドのアルバイト代で自らの食費や携帯料金などをまかなってきた。だが新型コロナウイルス禍で収入が減り、払えない。唯一の居場所だった学校の図書室はコロナのため、夏休み期間中は閉鎖される―。
「全力で支える」と田中さんは誓った。秋風が吹き始めた今も、定期的に食材を渡している。
子ども食堂の運営者に届く「SOS」
田中さんの実家は居住型の障害者支援施設。両親が利用者のケアで忙しい時、幼い田中さんを気に掛けてくれたのは地域の人だった。「両親以外の人に思いやってもらって気持ちが楽になった当時の記憶が、今の活動につながっている」
2013年7月、自宅1階を開放して地域の人の集いの場「Tree House」を開き、その約4年後には自宅近くで「TSUGAnoわこども食堂」の運営を始めた。これまでにゼロ~18歳の延べ約3000人が利用。コロナ禍で食堂の開放は途絶えがちだが、弁当配布などを始め、子どもとつながり続ける。
9月初旬、子ども食堂によく顔を見せていた千葉県内の中学校の1年の女子生徒が2週間ほど姿を見せなくなった。この女子生徒は、8月の東京パラリンピックの「学校連携観戦プログラム」に参加し、教員と生徒のクラスター(感染者集団)が発生していた。
LINEで様子を尋ねた田中さんに女子生徒は「私は家族以外とは接触してはいけない身なんです」。田中さんに促されて検査を受け、陰性を確認すると、生徒はほっとした表情を見せた。
子どもに寄り添う人に、投票したい
9月、高校1年の女子生徒が学校を休みがちに。生徒は涙ながらに「勉強についていけないし、友達もできない。学校に行く意味が分からない」と訴えた。オンライン授業が行われていたが「対面より質問しにくいし、行事もなく、友達をつくりづらいのだろう。誰とでも友達になれるような明るい子なのに」と、田中さんはコロナ禍での子どもたちの変化に胸を痛める。
衆院選で各政党は新型コロナ対策を含む経済対策に重点を置くが、子ども一人一人の事情に寄り添った施策は見えにくい。
田中さんは子ども食堂への助成金などの公的支援を何度も求めたのに取り合ってもらえなかった経験から、政治に冷めた視線を送る。でも、子どもを中心に据え、心を通わせた政策を実行に移してくれる人がいるなら、投票したい、とも思う。「選挙権のない子どもを軽視しているが、国の未来をつくるのは子どもたち。彼らのSOSに向き合ってほしい」
なるほど!
グッときた
もやもや...
もっと
知りたい