夏休みに読みたい、青春を詠む4冊 中高生が手に取りやすい俳句と短歌
全国高校俳句大賞の作品を紹介
まずは作品集から。(1)学校法人神奈川大学広報委員会編『17音の青春 2022』(KADOKAWA、770円)は、昨年の第24回全国高校生俳句大賞の最優秀賞や入選の作品などを収録する。
神奈川大が1998年に創設した全国高校生俳句大賞は、自由なテーマで3句1作品として募集している。昨年の最優秀賞には災害や弟の死、バーベルなどをテーマに据えた5作品が選ばれた。<自粛の夏風呂の石けん痩せ細る 横溝麻志穂><画面越し会えぬ友人寂しくて 五十畑優希>といった長引くコロナ禍を反映した入選作品もある。選考会の様子も収められていて、作品の評価を巡って交わされる選考委員のやりとりも興味深い。
同大によると、ここ数年、応募数の伸びが顕著で、ウェブからの応募もできるようになった昨年は、過去最多の1万4883通に上った。25回目となる今年も、9月5日まで応募を受け付けている。
俳句甲子園に挑む高校生の物語
小説で楽しむなら、(2)森谷明子著『春や春』(光文社文庫、814円)。松山市で毎夏開催される俳句甲子園に挑む高校生たちの物語だ。東京の女子校に通う茜(あかね)は、俳句好きな父の影響で小学生の頃から俳句に親しんできた。俳句の文学的価値を巡って国語教師との論争に敗れたのをきっかけに、仲間を集めて俳句甲子園を目指すことを決意する。
結成した俳句同好会のメンバーは、言葉の響きに敏感だったり、論理を組み立てるのが得意だったり、それぞれの個性が光る。実作や試合の様子が具体的に描かれるほか、俳句の歴史や、<去年今年(こぞことし)貫く棒の如きもの 高浜虚子>など近現代の俳人の句が、ストーリーに織り込まれているのも楽しい。なお、今年の第25回俳句甲子園は20、21日に開かれる。
歌人2人が短歌の作り方を指南
続いて、短歌。(3)『短歌部、ただいま部員募集中!』(岩波書店、1595円)は、歌人の小島なおさんと千葉聡さんが、主に中学生に向けて短歌の面白さと作り方を伝える。
学校やSNS、友達といった生徒に身近な話題をテーマに、2人がそれぞれの体験や考えを交えながら歌を紹介していく章「世界は三十一音でできている」が中心。引用歌とともに記された<短歌は落ち込んでいるときの自分の心を容(い)れるのにちょうどいい器です>(小島さん)、<短歌には、夢や、心からの願いが詠まれています>(千葉さん)などの一文に引きつけられる。
最後の章は「自分の今を詠んでみよう」。季節を感じること、自分の言葉で書くこと、といったヒントを示した上で、吟行や歌会の様子も紹介している。同書は昨年3月創刊の「岩波ジュニアスタートブックス」の1冊で、シリーズには神野紗希(こうのさき)著『俳句部、はじめました』(同)もある。
男子高校生2人の視点でつづる
歌集を味わいたい人には、(4)『玄関の覗(のぞ)き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』(ナナロク社、1540円)。歌人の木下龍也さんと岡野大嗣さんが、男子高校生2人の視点から7月1~7日の7日間をつづる物語歌集だ。
・下敷きを敷かずにできた筆跡の溝に時間の妖精がいた(岡野さん)
・弁当の底にぼんやりうつってる油まみれのぼくのたましい(木下さん)
表題作を含む217首から、青春時代の日常にある物憂さや焦燥、真摯(しんし)さなどが浮かぶ。
自分で作った句や歌を投稿したくなったら、東京新聞で日曜に掲載している「東京歌壇」「東京俳壇」もあります。
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