落語家の出前授業が広がる 千葉・安房地域、元教員・三龍亭千公さんがきっかけ 間や声の大きさ学ぶ機会にも

山本哲正 (2024年7月19日付 東京新聞朝刊)
 千葉県安房地域の小学校を中心に、落語を学ぶ授業がじわりと浸透している。落語家が小学校を訪問して実演する例は全国各地にあるが、地域で1、2校と少数にとどまることなく、市内ほぼ全校などと広がりを見せている。安房で出前授業を展開する南房総市の市民団体「南房総三龍亭」は「『やってみたら、良かった』と教員の間で口コミで広がっていった」という。
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「そばを持ち上げ、すする」。落語の扇子の使い方を学ぶ子どもたち=いずれも千葉県南房総市の三芳小学校で

日本文化、しきたりを学ぶ

 「ズズー」っと音をたてながら、子どもたちが一斉に手を動かし、そばをすするふりをする。南房総市立三芳小学校の図書室で、4年生約30人が今月2日、落語授業を受けた。

 南房総三龍亭の講師、三龍亭千公(せんこう)さん(66)と三龍亭夢学さん(53)が交代で、落語を実演したり、役によって顔の向きを変える「上下(かみしも)をきる」ことを教えたりした。

 授業を受けた山口快飛(かいと)さん(9)は「友達から『うまいね』と言われた」とにっこり。村橋湊(みなと)さん(9)は「落語をやってみたい。自分も面白い人になってみたい」と語った。

 同校の押元香織教頭(54)は「落語は日本の文化、しきたりなどを学べる。間(ま)や声の大きさなど普段のコミュニケーションにも役立つ」と話す。

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児童に落語を披露する三龍亭千公さん

 安房で落語授業が広がるきっかけを作ったのは、元教員の千公さんだ。現役時代、小4の国語教科書(教育出版)に掲載されている落語「ぞろぞろ」の筆者である故三遊亭円窓さんを招いて落語授業を行い、子どもたちが生き生きと授業を受ける姿に心打たれた。

 「落語を通じて日本文化に親しめる」「練習して演じることで自己存在感も高まる」と感じた。自分もその役に立ちたいと、52歳で円窓さんの門をたたき、仕事を続けながら師匠に学ぶ「社会人弟子」となった。

 異動のたびに勤務先の小学校で円窓師匠を招いた。2014年には、同じく円窓師匠の稽古グループに入った夢学さんと2人で「南房総三龍亭」を結成し、円窓師匠の授業を手伝いながら自分たちも実施し、23年度は同市では小学校6校中5校、鴨川市は7校中6校、館山市は10校中3校で行った。

想像力、表現力も高めて

 夏休みにはキッズ落語教室を開き、その後も落語を続けている若者たちがいる。千公さんは「円窓師匠がまいた種が育ってきている。子どもたちは輝く目で落語を聞く」と話す。

 円窓さんの三男で落語家の三遊亭窓輝(そうき)さん(54)は「師匠が全国の小学校を回った活動を手伝い、私も今、続けているが、市内ほとんどの学校で行われる例はほかに聞いたことがない。落語は想像力、表現力を高めるのにうってつけ。地域で盛んになることはありがたい」と喜んでいる。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2024年7月19日

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