左利きには難しい「書き順」問題 形は覚えていても…〈古泉智浩さんの子育て日記〉55

(2024年8月21日付 東京新聞朝刊)
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かき氷も左手で食べるぽんこちゃん

古泉智浩さんの子育て日記

同じ環境で育っているはずなのに

 「ぽんこが28キロある!」。脱衣場から、うーちゃんの大きな声が響きました。「えー!」。慌てて脱衣場に駆け込んで確認しました。最近ずっと体重計に乗っておらず、前に量った時は24キロでした。うーちゃんより大きいと驚いたのですが、その時より4キロも増えていました。うーちゃんは22キロです。身長はわずかにうーちゃんの方が高いのに、ぽんこちゃんの方が6キロも重い。しかし皮下脂肪はあまりなくて、がっちりとした理想的な健康体形に見えます。

 環境はほぼ同じなのに、成長は真逆のようです。うーちゃんはそれほど教えなくても、平仮名や数字をすいすい覚えて、ちょっとした文章なら保育園の時から読んでいました。ぽんこちゃんは覚えようとせず、教えるとブチ切れるという悪循環で、いつまでも字を読めませんでした。

 このまま小学校に行って、勉強についていけなくて苦しい思いをしたり、学校そのものが嫌いになったりしてしまったら大変だと、保育園のうちから公文に通わせてきました。今は、なんとか平仮名と数字の読み書きはできるようになりました。

書き順はそもそも右利きの人向け 

 ですが、問題があって、ぽんこちゃんは左利きです。そのため書き順通りに書くのが難しいようです。書き順というシステムが、右利きの人向けなのです。大体の文字は、左上から書き始めます。そうすることで、書いた線を手がこすらない仕組みになっています。

 漫画の原稿も一緒で、違う人もいるかもしれないですが、原稿の左上の作業から始めて、右下にずらしていく時に描いた絵を手がこすらないようにします。同じやり方を左利きの人がすると、描いたそばから紙に触れる手のひらの付け根部分が絵をこすってしまいます。

 左利き問題以上に、例えば「み」という平仮名をぽんこちゃんは、左下の〇の部分を最初に書いて、〇の右から線を上に伸ばして左にまげ、次に〇の右端から右に線を引いて、縦線をクロスさせて完成させます。このように、書き順がめちゃくちゃです。数字も文字の下の方から書き始めることが多々あります。形は覚えているので書けますが、公文では正しい書き順でないと次に進めません。

 細かな注意をすると、気分を害して公文のプリントをしないどころか、怒りだしてぐちゃぐちゃに丸めるなどするため、これまで好きに書いてもらっていたのですが、そろそろ正しい書き順にしてほしい。しかし、そもそも左利きが書き順に向いていません。左利きの人向けの書き順を開発してほしいものです。

古泉智浩(こいずみ・ともひろ)

 漫画家。養子の10歳男児うーちゃんと、6歳女児ぽんこちゃんを育てる。

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  • 左利き歴45年 says:

    私は左利きです。右手に矯正されずに過ごしてきました。

    小学校時代は書道の時以外は書き順に困ったことはありません。右利きの子どもたちと同じように学んで覚えました。縦書きが基本の国語では、ノートの文字も書きやすかったです。むしろ、横書きのほうが、小指の付け根で書いた文字をこすってしまってノートがいつも汚れていました。

    書道だけは格好よく書けずじれったかったですが、右手で筆を持って挑戦し、それなりに楽しんでいました。

    まだ小学校前のお子さんにあれこれ細かいことを言い聞かせるよりは、書くことの楽しさを感じてもらい、ゆったりとした気持ちで見守ってはいかがでしょうか。

    私の息子は右利きの1年生ですが、まだ書き順は出鱈目です。(笑)書き順の覚え具合に、あまり利き手は関係ない気が致します。

    左利き歴45年 女性 40代

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