修学旅行が大ピンチ! 物価高、インバウンドによる旅行費高騰… 自治体間で格差も

石川由佳理 (2024年10月30日付 東京新聞朝刊)
 「子どもが通う公立中学の修学旅行で東京ディズニーランドに行き、リゾート内のホテルに宿泊予定。積立金が足りず参加できるか分からないため、部屋割りを決める段階でも名前を入れられない生徒もいる。豪華なホテルに泊まることによる学びはあるのか」という読者の質問に、多くの意見が寄せられました。修学旅行の意義や現状についても取材しました。

修学旅行でディズニー、豪華なホテルで計8万円

<読者からの質問> 公立の中学に通う子を持つ母です。修学旅行で東京ディズニーランドに行き、リゾート内のホテルに宿泊することに。6万5000円を積み立てるほか、飲食代などで1万5000円ほど必要だそう。積立金が足りず、部屋割りを決める段階でも、名前を入れられない子もいるとか。豪華なホテルに泊まることで学びがあるとは考えにくく、皆さんの意見を聞きたいです。(愛知県・48歳)

グラフ 公立中学の修学旅行費用

物価高で旅費の高騰 大きな課題

 「今、修学旅行は非常にピンチだ」

 学校での旅行や合宿などの調査研究を行う日本修学旅行協会(東京)の竹内秀一理事長は指摘する。「授業で学んだ場所に実際に行き、目で見て体感し空気感や匂いや味を感じるのはすごく大事なこと」と意義を強調。だが、昨今の物価高に伴う旅費の高騰が大きな課題になっているという。

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修学旅行の意義や課題について語る日本修学旅行協会の竹内秀一理事長=東京都中央区で

 協会の調査では、2022年度に実施した国公立中学の旅費の平均は生徒1人当たり6万220円。コロナ禍で日程を短縮するなどした20、21年度を除くと、上昇傾向で、10年前と比べ約1割上がった。大まかな行き先や費用は中学では実施の1年半~2年前、高校では入学前には決まるといい、竹内さんは物価高が直接影響する来年度以降は特に厳しいとみる。

学校行事は体験格差を補う面も

 旅費の上限を定める自治体も多い。名古屋市は物価高などを受け、本年度の市立中の上限を2000円引き上げ6万700円以内とした。ただ、上限額の範囲で見積もりを依頼しても、価格が低すぎて旅行会社から断られることもあるという。

 費用を抑えるための行き先変更なども容易ではない。かつては旅行会社の担当者が頻繁に学校を訪れ、情報を伝え、助言していたが、コロナ禍でそういった人たちが退職や転職を余儀なくされた。豊富な知識を持つ人材が減り、会社側の対応力が下がったことに加えて教員も多忙で、前例踏襲の学校が多いという。

 修学旅行費の無償化を打ち出した自治体もある。東京都葛飾区は9月、区立中について来年度からの実施を発表した。竹内さんは「経済的な理由で参加できない生徒が一定数いる以上、全ての生徒に旅行体験を保障するのは非常に歓迎すべきこと」と語る。

 その一方、懸念されるのは自治体間の格差だ。「学校行事は子どもの体験格差を補う一面もある。修学旅行は授業と同じ位置付けなので、少なくとも義務教育課程の公立学校の旅費は、国や自治体が全面的に保障すべきではないか」と語る。

読者の声 昼食代を節約する子も… 国や自治体が支援を

 仕事で修学旅行のあっせんを担当していた静岡市清水区の男性(61)は「東京ディズニーリゾート周辺は宿泊需要が大きい上、費用に糸目をつけないインバウンド(訪日客)も多い」と語る。さらに、比較的低価格のビジネスホテルは従業員数が少なく、一度に多人数が利用する修学旅行に対応できず、食事会場も狭いところがほとんど。「宿泊料を下げなくても需要が見込めることや、施設の受け入れ能力なども関係するのでは」と、高額になる背景を説明する。

 名古屋市北区の女性(31)は自身の修学旅行直前、目的地の一つの東京都内で秋葉原無差別殺傷事件が発生。実施が危ぶまれた経験がある。そんな中で教師が「多少高くとも安全な宿泊先を確保しているので旅行には行く」と説明し、納得した記憶があるという。

 一方、「近年は積み立てでも足りなくなってきている」と声を上げるのは、中学校の教員を務める千葉県習志野市の女性(62)だ。移動で使う大型バスの料金なども高騰している。「生徒の中には(自由行動時の)昼食代を節約する子もいる。補助を出したり、割引料金を設定したりできないのか。国や自治体に応援を望む」と訴える。

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