スマホで盗撮を繰り返す…子どもの性的な問題行動にどう対処? 「ジェンダー教育を受けていても加害者に」
相談は盗撮が最多、小学生も
講演したのは西川口榎本クリニックの副院長で精神保健福祉士の斉藤章佳さん(45)。依存症の治療に長年携わり、性暴力加害者の再犯防止プログラムを担当する。子どもの相談も多く寄せられており、盗撮の相談が最も多いという。
斉藤さんがこれまで担当した中で最も年齢が低かったのは、小学6年の男子。学校で配布されたタブレット端末を使い、女子の更衣室を動画撮影していた。高校1年の男子生徒は下着盗撮で逮捕された際、スマホから短期間に撮影した画像が何千枚も出てきた。学校内で力を持つ男子グループに盗撮を命じられ、「勇気があるな」などとほめられたため、「自分が男として認められた」と感じたことが動機だったという。
全国的にみても盗撮の摘発件数は5730件(2023年)で、この5年で倍増している。斉藤さんは「女性をモノ扱いして男同士で絆を深め合う行為。ジェンダー平等教育を受けているはずの若い世代でも加害者になる」と指摘。社会背景として、女性の「性」を消費する行為を「男らしさ」とみなす考え方があり、「若者は、旧来の社会規範とのはざまで苦しんでいる気がする」と分析した。
人権を尊重し合う「性的同意」
クリニックでは06年から、性暴力の加害者を治療するプログラムを始めたが、加害者が治療を受けるまでに要した平均期間は「痴漢」が8年、「盗撮」が7.2年、「子どもへの性加害」が14年だった。未成年者の割合は全体の1割強という。斉藤さんは「治療につながるまでの時間を短くできれば、それだけ被害を減らせる」と訴えた。
また近年、性暴力の加害者が被害者と直接対話するプログラムや、お互いの人権を尊重する包括的性教育を学ぶ講座も実施している。「性的同意という言葉すら知らない人も多い。性犯罪には貧困や虐待など複雑な背景があるが、まずは人権に基づく性教育が必要だ」と強調した。
海外の例では、性的な問題行動を起こした12歳未満の子どもに週1回の治療を12回続けたところ、10年後の再犯率を2%に抑えられたというデータもあるという。「子どもの段階で介入できていれば、かなりの確率で成人後の加害行為を止められる。問題行為の発覚から司法手続きや社会復帰まで、子どもに寄り添っていくことが大事だ」と語った。