コロナが明けても不登校が急増 小学1年生は特に深刻 専門家が警鐘「幼児期のスマホ育児で無気力・不安に」
いじめ認知件数、暴力行為も過去最多に
「ポストコロナ仕様」となった2023年、小中学校は活気を取り戻した。マスクを外すことが奨励され、給食は対面に戻り、運動会や合唱などの行事も復活した。「主体的・対話的で深い学び」が推進され、スクールカウンセラーの配置も進み、校内に教室以外の居場所が整備された。
東北大の後藤武俊准教授(教育行政学)は「コロナ前と比べても小中学校の『いやすさ』は改善している。別室に登校する生徒に対し、教員も生徒も受容的になった」と分析する。
増加する不登校と同様、認知したいじめは73万2568件、暴力行為は10万8987件といずれも過去最多で、深刻な急増傾向を示す。不登校の増加率はやや緩んだものの、中学校で見ると生徒数600人の学校なら1学級(40人)分に相当する。
文科省が挙げる「3つの原因」に疑問符
調査で判明している不登校の主要因の最多は「無気力・不安」だ。その割合は年々増加し、2023年度は約半数に。文科省は2022年度調査まで不登校急増の原因にコロナを挙げてきたが、コロナ禍が明けた2023年度については以下の3点を挙げる。
(1)登校のみを目的とせず休養の必要性も明示した教育機会確保法が保護者に浸透したこと
(2)コロナ禍の影響による登校意欲の低下
(3)特別な配慮を必要とする児童生徒への指導や支援の課題
いずれもコロナ後も続く急増傾向を説明する理由としてはやや弱い。特に(1)の教育機会確保法の施行は2017年で、コロナが国内流行する3年前だ。(3)もここ数年に限った課題ではない。
低学年の異変…幼児期にも要因がある?
(2)を検証する上で注目すべきデータは、コロナ禍の制限だらけの学校を経験していない2023年度の小学1年生だ。コロナ禍の2021年度と比較すると、約2倍となる9154人に激増した。
また、小学生では学年が低くなるほど不登校の増加率が高くなっており、1年生が最も深刻だ。さらにこの10年間で、1年生の不登校児童数は実に約8倍に増加している。
異変は小学生、特に低学年で起きている。希望に目を輝かせた新入生の約1%が、学校生活に適応できない。認知したいじめの件数は、小学1~3年が小中学生全体の約半数を占める。
暴力行為は10年前と比較して中学生は17%減少したが、小学生は6.4倍に増えている。「一気にこういう数字になったことから、やはり対人関係の構築の未熟さを考える必要がある。要因は学校だけでなく、幼児期の発達にもあるのではないか」。後藤准教授はそう危惧する。
「スマホが子どもの脳を破壊している」
小学校に適応するために幼児期のうちに育んでおくべき力は「非認知能力」とも言われる。自分の感情を制御したり、他者の気持ちを推し量ったり、先を見通して我慢する力も含まれる。この力は大脳の前頭前野でつかさどられているが、その発達にデジタル端末が及ぼす影響の研究が進んでいる。
「スマホが子どもたちの脳を破壊している」。東北大応用認知神経科学センターの榊浩平助教はそう警鐘を鳴らす。
東北大では2010年度より仙台市教育委員会と共同で約7万人の小中学生に対する調査を実施。学力検査の偏差値、学習時間、生活習慣、デジタル端末との接触時間を多角的に分析した。その結果、デジタル端末から一方的に情報を浴びる時間が長いほど、前頭前野の発達が阻害され、学力が低くなると結論づけた。
特にスマホやタブレット端末での動画視聴やSNSの使用は、依存性が高い。榊さんは「学力低下だけでなく、不登校とも双方向的な因果関係がある」と指摘する。スマホ依存の子どもは生活習慣の乱れや心身の不調から不登校になりやすく、不登校の子どもは家にこもってスマホ依存になりがちだからだ。仙台市教委との間でも、不登校と関連づけて語られることが多いという。
親もスマホに依存 愛着形成が不十分に
日本では2010年から2015年にかけてスマホが爆発的に普及した。核家族化や共働きの増加などの社会的背景もあり、このころから乳幼児に動画やアプリを使ってしのぐ「スマホ育児」も当たり前の光景となった。この時期に2023年度の小学2年生から中学1年生が生まれている。
榊さんによると、スマホ育児を行う親もまた、スマホ依存であることが多い。こうした家庭では親子の愛着形成が不十分で子どもの不安感が強くなる。その結果、家から学校や公園といった外の世界に踏み出す意欲が湧いてこないのだという。
不登校対策に111億円 だが対症療法的
文科省は2025年度、111億円規模の不登校対策を進める。ただ、いずれも対症療法的で「子どもの無気力・不安」という根本要因には迫っていない。2023年度調査の担当者は「学校だけが要因でないことは認識している」としつつ「調査はあくまで生徒指導の観点で、デジタルや健康は省内の他の課の担当」と話し、脳の発達と不登校との関連を調べることには後ろ向きだ。
日本の今年の出生数は70万人を切る見通しだ。16歳未満のSNS禁止に踏み切ったオーストラリアのような国もある。子どもが健やかに育つ環境を整える中で、国策の前提となる統計調査の在り方が問われている。
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【関連リンク】文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」→こちら
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「コロナが明けても不登校が急増…幼児期のスマホ育児で無気力・不安に」
東京新聞さんが、このような、「様々な事情で、ギリギリの幼児期を過ごした親子を追い詰める」ような見出しを付けるとは。驚き、落胆しました。
コロナ禍のステイホームで、公園にも行けず、家屋も庭も狭い住宅で、どうやってワンオペ育児を乗り切り、子どもを生かしたか?
個人的には、「インターネットの力」は不可欠で、「スクリーンに頼ること」は不可避だったと思います。
コロナ禍の過ごし方について、後悔している・疑問が残っている保護者もいます。
その保護者たち(おそらく主に母親)を追い詰めるような見出しを、一人の専門家?の見解のみで付けたのは、何がねらいですか?
コロナ禍の外出制限が解除された後も、ベビーシッターや家事ヘルパー等の育児支援サービスは、「全員が、(希望すれば)安心して使える」という状況ではないと思います。
不登校の背景も、いろいろなデータ・要因・解釈があるとは思いますが、「すくすく東京」に記事を掲載する・Xに投稿するなら、見出しを変更していただきたいです。