<わたしの糧ことば・特別編>作家 広小路尚祈さん
(2017年7月20日付 東京新聞朝刊)
いくら頑張ったって、母親には勝てんぞ
息子がまだ赤ちゃんのころ、実家でいそいそとオムツを替えたり、寝かしつけたりする僕を見て、父が言った言葉です。からかうような言い方で、僕も「楽勝」なんて返したけど、ぐずる息子を抱っこして泣きやんだ時は、父の顔を思い浮かべてニンマリしたりして。結構意識してましたね。
父は仕事人間で、全く家のことはしなかった。共働きの母が全てやる姿に、小学生ぐらいから疑問を感じていました。ただ最近、孫をかわいがる父を見ると、本当は自分の子とも関わりたかったのかなとも思う。
僕は米をといだり、洗濯物を取り込んだり、よく母に言われてやっていたし、家事育児に抵抗はなかった。何より息子はかわいいし、面白い。せめて、母親と同じぐらいにはなれるはずだ、と思ってやってきました。母親に勝てるかというと微妙だけど、いい線いったんじゃないかな。
ひろこうじ・なおき
愛知県出身。2007年作家デビュー。著書に「うちに帰ろう」「清とこの夜」など。東京新聞の隔週金曜朝刊に「炊事 洗濯 家事 おやじ」を連載。
糧ことば
人生の先輩などから言われて救われた子育てに関する言葉。共有することで、独りぼっちで悩みがちなママたちの心を少しでも軽くしたい-との願いを込め、広告会社・博報堂の「リーママプロジェクト」のメンバーが名付けた。東京新聞では2016年9月から2年間、読者から寄せられた「わたしの糧ことば」を連載。著名人による特別編も5回掲載した。
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