父親は母親の添え物なのか…家庭内支持率を上げたい!〈お父ちゃんやってます!加瀬健太郎〉
(2020年8月7日付 東京新聞朝刊)
本当なら、とっくに始まっているはずの子どもたちの夏休みがスタートした。コロナと長雨で完全に季節感を失った僕の元に、先日、夏がチャイムを鳴らし、段ボールに入ってやってきた。本人がいない時に限ってやって来る嫁さんの夏物の洋服たち。動物なら夏毛に変わるこの季節、嫁さんには宅配便が届く。
その買い物に僕が渋い顔をしようものなら、「『ずっときれいでいてほしいから、結婚しても洋服買いや』って言ってたよね?」と問い詰められる。確かに言った。そう、あれは遠い日の僕のマニフェスト。あの時、どうしても結婚したかった(今では謎)僕が掲げた公約。こうなったら、どこかの政治家みたいにとぼけてしまおう。
ところで、僕の家族内の支持率はどうなっているだろう。
長男は、根っからの父親派を装うが、「寝る時はママがいいんだよね」と言うし、次男は、ずっと母親派だが、この頃は嫁さんによく怒られているので、こっちに寝がえってくれないかと願うが、望み薄し。それより、問題は三男である。
今三男は、「ママママ期」真っ盛り。僕がどんだけ頑張ろうが、「ママ、ママがいーい」である。もう諦めました。結局、子どもにとって父親なんて母親の添え物だと。僕は泣きそうになって叫ぶ、「おかあーさーん」と。
※第1金曜日掲載
加瀬健太郎(かせ・けんたろう)
写真家。1974年、大阪生まれ。東京の写真スタジオで勤務の後、ロンドンの専門学校で写真を学ぶ。現在は東京を拠点にフリーランスで活動。著書に「スンギ少年のダイエット日記」「お父さん、だいじょうぶ?日記」(リトルモア)「ぐうたらとけちとぷー」(偕成社)など。10歳、7歳、3歳の3兄弟の父。これまでの仕事や作品は公式サイトで紹介している。
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