「どうやって生まれたの?」答えるチャンスは一度きり とにかく明るい性教育「パンツの教室」で学びませんか - 東京すくすく | 子どもとの日々を支える ― 東京新聞

「どうやって生まれたの?」答えるチャンスは一度きり とにかく明るい性教育「パンツの教室」で学びませんか

 「とにかく明るい性教育『パンツの教室』」という名前を聞いただけで、興味津々になりませんか? 「とにかく明るい」といっても、お笑い芸人ではありません。思春期のわが子と笑いながら性の話をすることを目標に「まずはお風呂でのパンツ洗いを習慣づけよう」と呼び掛けているから「パンツの教室」。東京都内で開かれた体験教室をのぞいてみました。

体験会に参加した母親たちに「性に対する正しい知識はお守り。知っていて損することはありません」と話す酒井博子さん

「そんなこと知らなくていいの」と答えると

 この日集まったのは、都内や埼玉県内に住む、幼児や小学生を育てる母親6人。参加理由は「初潮を迎えた娘に命の話をしたい」「3人目が生まれるが、『最初は卵なんだよね』と無邪気に聞いてくる小学1年の息子にどこまで説明していいのか」「親の知らないところで性被害に遭ったら不安」と、さまざまです。

 「お子さんたちに、自分はどうやって生まれてきたのか聞かれたことは? 何と答えましたか」。インストラクターの酒井博子さん(36)=さいたま市=の問い掛けに、母親たちから出てきた答えは「卵子の画像を見せて科学的に説明した」「おなかから出てきたと言っている」などでした。

 酒井さんによると8割の子どもが5歳までにこの質問をするそうです。動揺して「そんなこと知らなくていいの」などと否定的に答えると、子どもは「お母さんを困らせたくない」と、二度と聞いてくれなくなってしまう「一度きりルール」があるのだとか。

 小学校の学習指導要領では、人は母体内で成長して生まれることは教えますが、受精の過程は教えません。酒井さんは「高学年ならセックスという言葉は知っている。学校で教えてくれなければ、子どもたちはネットで検索します」。誤った知識を植え付けないために家庭での正しい性教育の必要性を説きます。

初級講座で使う性教育カード。ゾウやカタツムリなど17種の動物の「オス」「メス」「交尾」の3パターンがある

性犯罪者のターゲットにされやすい子は?

 講座では子どもの性被害にも話題が及びました。警察庁の統計では、2018年の1年間で児童買春などの性被害に遭った18歳未満の子どもは1715人。このうち児童ポルノの被害者は1276人で、4割強が自ら撮影した画像、いわゆる「自画撮り」の被害です。男子の被害者も全体の1割います。

 残念ながら子どもが安心して遊べるはずの公園などで、性犯罪者が連れ去りなどを狙うこともあります。「パンツ丸見えで鉄棒や滑り台で遊んでいる子」「砂場で集中している子」など、公園ではごく普通の風景ですが、酒井さんによると、性犯罪に対する危機感が薄い、周囲に注意を払えない子としてターゲットにされやすいそうです。

私もかつて被害者で…母の言葉に救われた

 小学3年、1年、4歳児の男女を育てる酒井さん。自身が小学2年の時、遊びに行くたびジュースをくれた近くのマンションの管理人からある日、パンツを見せるよう頼まれ、応じてしまいます。「なんとなく嫌」と思って相談した母親が管理会社に通報。ほかにも被害者がいたことが判明したそうです。

 「『人にパンツを見せちゃだめ』とは誰からも教わらなかったけど、母に言えたから救われた。わが子に同じような被害に遭ってほしくない」と、インストラクターになったそう。赤ちゃんはどうやってできるのか、生まれるのか、折に触れ説明するうち「子どもたちは、生理中の私のおなかをなでてくれるようになりました」。

明るくやろうと思ったワケは? 「パンツの教室」主宰・のじまなみさんに聞く

「うちの子はのんびりしてるから大丈夫、と思わないで」と話すのじまなみさん

 教室を主宰する「とにかく明るい性教育【パンツの教室】協会」の、のじまなみ代表理事(38)=埼玉県和光市=は、3人の女の子の母。中学1年の長女が数年前、友達とタブレット端末でこっそり性行為に関する動画を見ていたことに衝撃を受け、「子どもたちはひな鳥と同じで、初めて見たものを信じてしまう。良い悪いを判断できない」と、性教育の必要性を痛感しました。性教育について調べ、看護師だった経験を生かして2年前に講座を始め、昨年1月に協会を設立しました。

 協会のインストラクター200人が、2時間の体験会のほか、初級は4時間、中級は8時間かけて、男女の身体の違い、子どもの問いにどう答えるか、性被害の防ぎ方などを全国各地で教えています。

 のじまさんが性教育を「明るく」やろうと思ったのは、生理周期や妊娠の仕組みなど「性の話を包み隠さず話してくれた」父親の影響が大きいといいます。でも、そんなお父さんは少数派。「『いずれ知るんだからほうっておけばいい』という人がほとんどだし、子どもたちと接する時間が少ないお父さんに性の話をしてもらうのも酷」。教室は母親向けにしました。

 家庭での性教育は、おもらしした自分のパンツを洗えるようになる3歳ごろから、初潮や精通など第二次性徴を迎える前の10歳までが最適だそうです。では、すでに思春期を迎えた子にはどうしたらいいの? 「簡単に、端的に必要なことだけ話して。あれもこれも言おうとすると、めんどくさがられます。短くても『あなたを大事に思っている』という思いはしっかり伝わります」

 家庭での性教育の第一歩は「性=恥ずかしいもの」という概念を取り払うこと。「性器の名前は元気に発して。生理・精通の説明抜きに、子どもに命のスタートの話をしても伝わりません」とのじまさん。まずは一緒にお風呂に入って、子どもにパンツを洗わせながら、水着で隠れる部分(プライベートゾーン)の大切さから伝えてみませんか。

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