子どものスマホ依存症「時間制限の約束が守れなくなったら危険」 脳への影響は? 回復に必要なことは?

佐橋大 (2024年8月13日付 東京新聞朝刊)
 夏休み中の子どもたち、スマートフォンやゲームのし過ぎで叱られていませんか。医師で、スマホ依存防止学会代表の磯村毅さんに、依存とはどんな状態をいうのか、それを防ぐにはどうしたらいいかを聞きました。 

図解 スマホがやめにくくなる仕組み

弱い刺激では満足できない脳に

-スマホやゲームをし続けると、脳にどんな変化が起きるのですか。

 二つの変化が起きます。一つはゲームやSNSをすると、脳内で、ドーパミンという物質が出ます。ドーパミンが強く出るのは、何かに集中する時、特に中身が分からずドキドキする時です。ゲームをしたり、動画を見たりする時はもちろん、スマホに通知があって、「何かな」と思っただけでも出てきます。こうやって繰り返していると、ゲームやSNS以外の弱い刺激ではドーパミンがなかなか出ない脳に変化していきます。他のことをしようとしても集中しにくくなるのです。

 二つ目はスマホやゲームをしている時は、脳の前頭前野に血液が十分流れず、その働きが弱くなります。そうした研究のデータがあります。前頭前野は感情をコントロールする働きをしているので、キレやすくなり、我慢する力が弱くなると考えられています。

 さらに進むと、不登校や暴力、昼夜逆転などの問題が起きることが多くなります。依存症の状態です。やめないといけないと分かっていても、同じことを繰り返す「止まらない回路」ができてしまっています。

-依存症になると、やめにくくなるのですか。

 はい。例えば、たばこ。「もう吸わない」と決心し何年も禁煙しても、1本でも吸うと元の状態に戻ってしまいます。子どもがスマホやゲームに依存している場合、大人の依存症より回復しにくいと言われています。子どもの脳は前頭前野が発達の途上で、欲求を止める力がもともと弱いと考えられているからです。

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スマホ依存防止学会代表の磯村毅さん

依存しやすい子は使えない環境を

-治るのでしょうか。

 ゲームやスマホをしながらでは厳しい。時間制限などの約束が守れなくなった場合は特に厳しいです。前頭前野が弱っているからです。しかし、ゲームやSNSのアプリの削除や、スマホの使用をやめると回復してきます。3週間くらいかかることが普通です。

 やめることで、気持ちが穏やかになったり、集中力が上がったり、よく眠れるようになったりする人がいます。ただし、以前と同じ使い方をすると元に戻ります。本当に必要な機能や使用時間をよく考えて、少しずつ脳が耐えられる範囲を探りましょう。

-周りの大人たちへのアドバイスはありますか。

 依存しやすさには個人差があり、依存しやすい子だと、学習用のタブレットでものめり込んでしまいます。タブレットを持ち帰ると、使い続けるようであれば「宿題は紙で出してもらう」「調べ学習は学校で行う」などの対策が必要です。

 デバイス、アプリによっても、依存しやすさは違います。持ち運べて他の人とつながるものは特に注意が必要です。持たせる判断は、子どもの脳の発達の度合いも考えましょう。どうしても渡さないといけない場合、必要な時以外は親が預かったり、ペアレンタルコントロールなどの対策を取ったりして、脳が回復する時間を確保しましょう。

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