都内で保育士の大量退職が相次ぐ 「5人以上」17園、10人中8人の園も 背景に待遇の悪さ

渥美龍太 (2019年11月15日付 東京新聞朝刊)
 保育士が大量退職する例が相次いでいる。本紙が東京都の23区の区役所にアンケートしたところ、2019年3月末の年度替わり前後に5人以上が辞めた例が少なくとも17園に上り、保育士全体の3割以上が辞めた園は合計10カ所、半数以上が辞めた園も4カ所に上った。だが、ほとんどの区が退職状況を網羅的に調べておらず、親への情報提供もしていない。専門家や保護者団体は実態把握と情報公開を求めている。

本紙の23区アンケートで判明 年度末に集中

 アンケートは全23区に電話とメールで実施。5人以上の保育士が相前後して辞めた例を聞いた。

 文京区では10人中8人が辞めた園があり、別の園では12人中8人が辞めていた。北区でも12人中8人が辞め、杉並区でも12人中7人が辞めていた。

表

 背景にあるとみられるのが待遇の悪さだ。内閣府の調べでは保育士の年収は正規職員でも平均360万円。全産業の正社員の平均値・500万円に比べると3割低い。長年勤めてもほとんど上がらない給与体系が多く、一カ所で働き続けるメリットが乏しい。年度末に大量退職するのは「不満があっても年度末までは勤め、転職や別の園に移る人が多い」(文京区役所の担当者)ためとみられる。

子どもの安全や教育に悪影響 専門家が懸念

 いずれの園も新規募集などで穴埋めし、配置基準はクリアしている。

 だが、保育士が大量に入れ替わることによる子どもの安全や教育への悪影響を指摘する専門家は多い。保育に詳しいジャーナリストの小林美希氏は「頻繁な保育士の入れ替わりでチームワークが取れなくなれば、全体に目が行き届かなくなり、子どもの危険性が増す」と指摘。和歌山大教育学部の米沢好史教授は「保育士が子どもとの絆を育みにくくなり、子どもの発達への影響も出てくる」と言う。

退職数は多くが非公表 実態把握が進まない 

 だが、退職状況の情報公開は進んでいない。

 大量退職に関する親からの不安の声は保護者団体「保育園を考える親の会」(東京)にも多く寄せられている。同会は「保育士の退職状況は保育園を選ぶ際の重要情報」として保育園ごとの退職数を公表するよう政府に長年求めているが、実現していない。

 実態把握自体も不十分だ。今回のアンケートでもほとんどの区が保育園の退職状況を網羅的に調べていないとしており、把握していた例は保護者から通報があった場合などに限られていた。世田谷区は例外的に園ごとに調べホームページで公表しており、その結果として大量退職した園の数が膨らんだとみられる。

 10月からの消費税増税に伴う保育の無償化で子供を保育所に預ける親が増える可能性があり、今後、労働負担の増加から退職や入れ替わりが加速する可能性がある。米沢教授は「自治体や国が責任を持って情報公開を進めるべきだ」と主張する。

〈関連記事〉保育士の大量退職の実態 事故も増加「この人数では責任持てない」 待遇改善と情報公開が急務

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2019年11月15日

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  • 匿名 says:

    退職の問題で意外と誰もあげてないのですが、保育士専門の複数のエージェントが最近すごく増えており、虚偽の待遇で園に人を斡旋しています。
    保育士の仕事をバカにした詐欺のようなもの、法で規制してほしい。
    一度個人情報を手にすると、これらの企業は昼夜問わず電話をかけてきます。
    有資格の記者さんいないかな、記事にしてほしい…。
    虚偽の待遇で保育士を入れ、園からは高い手数料をとっています。
    そのため結局入社時から我慢して離職、SNSでこの話してる保育士多いです。こんなの許されない。

      
  • 匿名 says:

    《登園自粛》はあくまでお願いレベルであり、仕事が休みでも、育休中でも、当たり前のように登園してきます。37.5℃以上で電話連絡を入れても《今は迎えに行けない》と平然と言い、帰宅後から数時間しか様子を見ていないのに《熱上がらなかったので今日もお願いします》と翌日連れてきます。下痢や鼻水は《いつも出ているんで》と主張してくる方までいます。

    我が子は登園自粛の中で自粛出来ずリスクを承知で保育園に預け、自粛し家庭保育できる家庭の子を預り育児する日々に憤りを感じます…。3密や濃厚接触が避けられないものの、少しでもリスクを減らすために神経を使って仕事して…保育士ってこんな仕事だっけ?辞めたいな。と思っています。
    ただやはりクラスリーダーとして担任をしているので、放り出すわけにもいかず…。我が子を守りたいのに上手く動けない自分に疲れてきています。

      
  • 匿名 says:

    保育士です。人格形成の大事な時期を共に過ごし、また、1つの命を預かるという重責の自覚のない保育者もいる事実が悲しいです。好きな仕事ですが、一生続けられるかは疑問です。
    社会的にもっと子どもへの待遇を見直すべきではないでしょうか?
    躾は園で行うものだと考えている保護者も多い現状で、指針が変わり見守り保育となった事に危機感を覚えます。親として、1人の人間を育てるという意識の形成、家庭における躾や教育の方針、実践力の向上なくして、子育てひいては未来の担い手の育成には繋がらないのではないでしょうか?それを理解していないのに、保育園へクレームを入れてくるモンペの多さにゾッとします。
    保育園を乱立し、質の低い保育を提供するよりも、社会全体の子育てに対する理解度と協力体制の構築が急務なのでは?先ずは現場の声を聞き、各年齢ごとの人員配置数を見直してください!社会全体で子育ての意義が向上すれば、我々保育者の社会的地位も見直され、適切な賃金と保護者の協力でもってより社会に貢献できるのではないでしょうか。

      
  • 匿名 says:

    「給料アップ」が一番だと思いますが、、、それだけではなく、うちは世代間による保育観の違いが離職にも繋がっていて。話し合えばいい、そうかもしれませんがやはり保育に対する思いの、情熱のズレがあります。残業、持ち帰り仕事以外にも、そういうのも1つの要因ではないかなとも思います。うちだけですかね。。。

      
  • 匿名 says:

    保育士です。
    園長の人間性がその園のカラーを決めます。園長が保育士を大切にすると、その保育士は子供を大切に保育します。園長が保育士を自分の思い通りに動かそうとすると、保育士も子どもに同じことをします。経営者や園長は、そこを忘れないでほしいです。そこに気がつけば、保育士は辞めないはずです。

      

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