相次ぐ保育士の虐待 「不適切保育」初の実態調査へ 厚労省が防止策のマニュアル作成目指す
奥野斐 (2020年8月31日付 東京新聞朝刊)
保育所内で起きた園児への暴言や暴力、放置など虐待が疑われる「不適切保育」について、厚生労働省が本年度中にも初の実態調査をする方針であることが分かった。待機児童対策で保育施設が急増する中、保育士らが園児をたたいてけがをさせたり、怒鳴ったりする事例が発覚しており、国は市区町村の対応状況の把握や虐待防止策のマニュアル作成を目指す。
国の見解が示されず、市区町村の対応に差
厚労省が本年度に実施する「子ども・子育て支援推進調査研究事業」の1つ。今月から調査・研究をする団体を公募。団体は社会福祉法人やNPO法人などを想定し、予算は上限1500万円。
厚労省保育課によると、保育所などの児童福祉施設の運営基準には「児童の心身に有害な影響を与える行為をしてはならない」という規定はあるが、不適切保育や虐待の定義、実際に起きた場合の対応については、保育を実施する市区町村に対し国から統一的な考えは示されていない。虐待などの通報を受けた市区町村はその施設に事実を確認し、都道府県と連携して指導・監査する場合もあるが、対応はまちまちだ。
幅広い概念「不適切保育」定義の整理も
介護や障害福祉分野では国の虐待対応マニュアル・手引があるが、保育分野では手引などが存在しない。厚労省は今回の調査を通じて、市区町村が不適切保育を未然に防ぐ取り組みや実際に起きた際の対応を調査し、さらに防止策や対応マニュアルを作る。
厚労省の担当者は「『不適切保育』という言葉は虐待より幅広い概念で使っているが、こうした言葉の定義や考え方も整理できれば」と話している。
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