大田区の3歳女児放置死 「もし自分の園だったら…」保育士たちが”気づき”を模索、独自の報告書 保育園は虐待予防のとりで
事件の1年3カ月前に退園 健診にも来ず
報告書を作成したのは、「保育と虐待対応事例研究会」。元保育園長で、会の中心メンバーの由井和子さん(66)と仁木やす子さん(74)は「いつ、どの保育園でも起こり得る事件。もし自身の保育園で起きたら保育士として要支援家庭と認識できたか、想像しながら議論を進めた」と話す。
事件はJR蒲田駅近くのアパートで起きた。20代の母親が1人で女児を育てていたが、事件前の8日間家に帰らず、帰宅すると女児は亡くなっていた。母親は保護責任者遺棄致死容疑で逮捕、起訴された。事件の1年3カ月前に保育園を退所し、半年前の3歳児健診にも姿を見せず、支援が必要な家庭に公的機関がどう関わるか、課題になっていた。
保護者の表情の変化 保育士は気づける
報告書では、保育士はどのような「気づき」ができるかを主眼にした。入園面接で見せてもらう母子手帳や入園書類の内容の違和感、子どもが過剰に甘えたりしなかったかなどの意見を列挙。「ハイリスク家庭の子どもが退所した後の支援をどうするのか、どこに引き継ぐのかを考えなければならない」と記した。
母親自身も小学生の時、虐待を受け、児童養護施設で育った。事件前、母親がSNSで頻繁に子どもの話題を発信していたことから「どうにか子育てをしていこうとしていた」と頑張りを認める一方、「子どもが育っていくためには安全で安心できる生活環境が必要であることが、本当にわからなかったのではないか」と思いやった。
由井さんと仁木さんは「保育園は、保護者にとっても未熟さが温かく受け止めてもらえる場。子育てに行き詰まってしまう保護者たちの表情の変化に気づけるのも保育士だ」と話す。だが、行政の動きは鈍い。
区の検証は区幹部のみ 喉元過ぎれば…
大田区は事件から3カ月後、検証報告書を作成。外部有識者の意見は付けたものの、検討委員は区幹部の「身内」のみ。保育園の課題としては「認証保育所の管轄は東京都」とするだけだった。
東京経営短期大の小木曽宏教授(児童福祉)は「大田区の報告書は対外的にまとめたにすぎず、喉元過ぎれば熱さを忘れるという姿勢で、教訓を生かそうとする責任感は残念ながら感じられない。関係機関が連携しなければ、命を守る情報が『線』にならずに『点』でとどまり、隙間に落ちてしまう。再発防止の鍵は情報の集約と連携にある」と指摘する。
児相通告だけでなく、予防的な関わりを
厚生労働省によると、2019年度に児童相談所に寄せられた虐待相談件数は19万3780件で年々増えているが、警察や近隣住民からが多く、保育園からは1600件余しかない。
虐待問題の取材を続けるルポライターの杉山春さんは「児相への通告ももちろん大切。だが、親子を引き離そうとするのではなく、保育士は子ども家庭支援センターにつなげたり、予防的な関わりを大事にしている。保育士が果たす役割はとても大きい」と語る。
「保育と虐待対応事例研究会」は2001年に保育士有志で発足させ、40人の会員が日ごろ現場で感じた悩みを持ち寄り、20年間で180件を超える事例を検討してきた。今回の報告書も昨年8月から半年以上かけて話し合い、7月に大田区に提出した。由井さんと仁木さんは「保育園は日中に子どもをただ預かる施設ではなく、子どもや保護者のそばにいる存在。虐待予防のとりでだとの思いを共有したい」と話す。
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子供は親を選べない、虐待された親は育て方に悩む、子育てには正解はないし、その問題を手助け出来るのは、子供の成長に関わる、保健師、保育士、医師等さまざまいる中で連携し子供だけではなく、親としての指導をしてみんなで助け会いその輪廻をくいとめることができるようになれたら、このような悲しい子供が出ないのではないかと、由井先生や仁木先生の考えに共感します。
公認心理師・臨床発達心理士(匿名)
保育所・幼稚園・子ども園・小学校の心理士として巡回相談を行っている中で、保育者や教師(以下、保育者)と「虐待事例ではないか」と思いを共有することは珍しくありません。そのほとんどの場で「既に家庭支援センター等と連絡しているがその後の動きがはかばかしくなくて・・」と保育者から伺い、「この地域もか」と思わされます。子どもの安全と幸せのために早く何らかの対応をしてほしいという願いを受け止めてもらえない、保育者の無力感が伝わってきます。
大田区の3歳女児放置死に関する「保育と虐待対応事例研究会」(以下、虐待研)の報告書は、保育士が虐待をどう捉え向き合うのか、また虐待を予防するための視点を実践的に導き出しており、大変参考になる資料だと思います。保育者として真摯に子どもと子育てをする保護者に向き合おうとする誠意が伝わってきます。一方、区の報告書には具体的な対応としての方向性が示されていないように思います。
「気づいて連絡しても実際の支援になかなか結びつかない」という保育者のもどかしさや無力感が解消され、子どもたちの健やかな成長のために頑張れるために、虐待研の活動が広く大きくなることを期待しています。
現在認可の保育園園長をしています。この記事を読んで同意するところが沢山ありました。当園でもネグレクトのお子様がいて1カ月に数日しか登園しません。支援センターは母親の支援をしています。欠席が続きていると連絡するも「連絡してみます」のみ、その間家にいて食事を与えてもらえないことが子どもからの訴えでわかるも、支援センターは母親をかばう。児童相談所に相談するも支援センターに状況を聞き動かず。結局は「母親の支援が先」となってしまった。私たちにできることな何もないのでしょうか?行政は「子どもが死なないと動かない」と思ってしまいます。
大田区に有料老人ホームでの虐待に近い行為を伝えた時も、管轄は東京都と言って、区内のことなのに聞こうとはしませんでした
また、保育園内での虐待について、大田区内から電話をすると近くの児童相談所に通じる番号があるのですが、その児童相談所(品川区)に、大田区の保育園内での虐待に近い不適切行為を伝えた所、区役所に言ってと言われ、やはり自分たちは関係ないと言う態度を取られました
東京都に確認すると、保育園内での虐待も児童相談所が受けつけることになっていると言われました(横浜市の保護者も保育園での虐待について児童相談所に伝えた所、やはり区役所に言ってと言われたそうです)
子どもやお年寄りのことで連絡があったら、まずは受け入れ繋げる姿勢がないと危険な感じがします
勇気をもって電話をしているのだから、自分には関係ないと言ってそこで情報をストップしてしまうと、問題がそのままになってしまうかもしれません