長野市の”公園閉鎖”問題 1軒の苦情から…「事実上の園庭、尋常ではない音」 「寛容になれないものか」 見つからなかった着地点

吉田拓海 (2022年12月13日付 東京新聞夕刊)
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住民の苦情を機に閉鎖が決まった青木島遊園地=長野市で

 「子どもの遊ぶ声がうるさい」。近隣住民1世帯の苦情に端を発し、長野市が「公園」の閉鎖を決めたことが波紋を広げている。市側は地元の意見も踏まえた総合的な判断で「1世帯の意見に流されたわけではない」と釈明するが、子どもが自由に遊べる場を奪うとの見方から、批判の声が殺到。一方で「私たちの苦しみも知ってほしい」と訴える抗議した男性に同情の声も上がる。

学童や保育園のグラウンド代わりだった

 以前は元気な遊び声が聞こえたであろう園内に人影はない。入り口のフェンスには、「3月31日をもって廃止します」の張り紙があった。長野市青木島町大塚の住宅地にある「青木島遊園地」。2004年、市が地元住民の要望を受けて開設し、隣接する学童施設や保育園などが、グラウンドの代わりに子どもを遊ばせてきた。

 隣接する家に住む男性が、騒音被害を訴えてボール遊びの禁止などを求めたため、市は出入り口や遊具を男性宅から離れた場所に移設。子どもが男性宅に近寄らないための植栽を増やし、大きい音を立てないよう注意を呼びかける看板を設置するなど約100万円かけて対策を講じてきた。

子どもが男性宅に近づかないように植えられた公園内の植え込み

「1世帯の苦情で…」全国から批判殺到

 昨年3月には学童保育施設の職員が児童を引率していると、男性が「5人以下で遊ばせてほしい」と抗議。以来、施設は公園利用を自粛している。

 これに合わせて学童施設の職員や保護者による公園の清掃も中止に。代わりに作業を担う有志が現れず、今年1月に地元区長会が市に閉鎖を求めたため、「総合的に見て、廃止はやむを得ない」(市の担当者)との結論に至った。

表 青木島遊園地廃止に至る経緯

 こうした経緯を市議の1人が12月にツイッターで紹介すると「1世帯の苦情で子どもたちの遊び場がなくなった」という構図に、市には全国から意見が殺到。12日までに600件を超えた。多くは廃止に反対意見だった。

「公園をなくせとは一度も言ってない」

 一方、抗議した男性は「公園をなくせとは一度も言っていない。常識の範囲で、親子が公園で遊ぶ分には文句は言わない。ただ、学童施設の事実上の園庭のように利用されていて、尋常ではない音がした」と主張。妻は目を腫らしながら「18年間、家の前で毎日のようにたくさんの子どもが遊ぶ声がしたら耐えられますか」と問いかける。市には、「自分も近くに公園があって同じように困っている」との声も寄せられたという。

 学童施設の関係者は「うるさいという感覚は人それぞれだが、寛容になれないものか」と疑問を口にする。双方の着地点が見つからないまま、長く地元の子どもたちに親しまれた遊び場は来春、姿を消す。

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閉鎖が決まった青木島遊園地

青木島遊園地

 2004年に長野市が設置。広さ1376平方メートル。都市公園法に基づく公園とは異なり、市が独自に設ける公園に準じた広場で、閉鎖する場合の手続きが煩雑な公園に対し、法律などの縛りを受けない。同様の「遊園地」は長野市内に521カ所ある。

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  • 匿名 says:

    「気にならない派」の人は「私も」といいます。寛容イコール善人なので、その仲間入りできたこと、できることを心底無邪気に誇らしいと考えているようです。「気になる派」の人は「私も」とは言いません。不寛容イコール悪人とみなされる「空気」と闘っていらっしゃるのですね。いたずらに群れを作らず孤独に闘っているようすが目に浮かぶようです。「20代」くらいなら「老害」などとののしられなくてすみますね。うらやましいです。

  • 匿名 says:

    公園の前に住んでいる者ですが、訴えられた方に共感する部分が大きいです

    朝の7時〜深夜まで子供や学生の声がするため、あまりにうるさい時は口頭で注意しています。深夜は学生が騒いでいるのが殆どなので、通報しています。
    (子供より倫理観が無いし、SNSなどで報復された場合の度合いも違ってくる為)

    ただ年下相手でも上から怒鳴るのではなく、あくまでこちらからお願いをするように穏やかに交渉すると、大半の人は(あ、やべ…)といった顔をしながら『ごめんなさい』と返し、その後は静かにしてくれます。こういうのは対話しないとダメですよ。

    仮に自分の子供のせいで苦しんでいる人がいるのに、『子供の方がお前より大切だから、黙って我慢していろ』って、どうなんでしょう。
    ちょっと自己中がすぎるんじゃないかな。

     男性 20代
  • 分かり合えるということ says:

    私は気にならない派の人はいったい何が言いたいのでしょうか。そう思うだけならそうは思わない人とは議論にはなりません。ただの喧嘩です。人の思いはその人にとっての思いであって、それを陳述することは自由ですが、他の人がそれを否定したり賛同したりすることには意味がありません。無駄です。スポーツをする人はインタビューの最後を必ず「思います」で締めくくってそれで何かを伝えたつもりでいますが、実は何も伝えていないのです。思ったという個別の体験から何かを感じ、感じたことをつづって(文章に限りません。多様な表出方法があります)、それを自他が賞味すること(考えるということです)によってはじめて、相互交流ができるのです。共感と反感が生じ、各自の中に知見として定着します。これが分かる、分かり合えるということです。人間の思考過程は、思う・感じる・考える・分かるで完結します。そこには当然豊かな感性と確かな論理がなければなりません。そういう議論ができればこういった問題も解決するかもしれません。

    分かり合えるということ 男性 70代以上
  • 匿名 says:

    騒音値測定せよとの意見もあるけど、意味あるかなぁ。何デシベルって基準決めても、うるさいと感じればストレスだと思うよ。

  • マンションオーナー says:

    私も【全く気にならない派】です。
    私の住んでいるマンションの隣に園庭付きの保育園が出来ました。マンションの住人の一部の方が、園庭で遊ぶ時の声がうるさいと苦情を行ったらしく、オーナーのこちらに園から謝罪がありました。
    子供が泣いたら、「転んじゃったのかな?」笑っていたら「今日も楽しそうだな」と思います。可愛いじゃないですか。うるさくても良いじゃないですか。私も孫がいる身ですし、全く気になりません。

    早朝にラジオ体操大音量で流したり、夜中に珍走団が集まるのよりよっぽど良いです。
    園には気にしなくて良いと伝え、クレームを言われた方には、無理に住まなくていいんですよ、どこか静かなところに引越しされたらどうですか。と言いました。こういう年配で人を嫌な気持ちにさせてる人のこと、老害って言うんですよね。
    だから少子化が止まらないのよ。

    マンションオーナー 女性 70代以上

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