「時計が読めない」を解決! 子ども向け「ふんぷんくろっく」発売から10周年 5分刻みで一目で分かる
あえてアナログ 世界中で人気
ふんぷんくろっくは、短針が示す「1~12」の外側に、長針が示す「0~55」の5刻みの数字を配置。一般的な時計のように「1~12」の数字のみの文字盤では、長針が「1」を示した時に「5分」を意味することをすぐには理解できない小さな子どもでも、一目で5分を指したと分かる。
富山県高岡市のインテリア製品企画販売「タカタレムノス」が販売し、世界中でシリーズ累計11万個を売り上げるなど、デジタル時代の今も息の長い人気を誇る。17年にはグッドデザイン賞を受賞。その後、15分ごとに区切って文字盤を色分けしたデザインの商品を含め、第13回キッズデザイン賞も受賞した。
アイデアのきっかけは、土橋さんが12年夏に主宰した親子向けのワークショップだ。照明器具をデザインする作業を、決められた時間内に終えられない子どもが何人かいて、不思議に感じた。会場内を見回してみると、デザインを重視したためか、時刻が読み取りにくい時計が一つあるだけだった。
子どもが作業しやすい環境を整えようと、時刻を把握しやすいデザインの時計を探し回ったが、結局見つけることはできなかった。
おしゃれなデザインはいらない
「どうして子ども用の時計はないんでしょうか」。仕事を通じて交流があったタカタレムノスの当時の社長に聞くと「あなたがデザインしてみてはどうか」と逆に勧められ、新しい挑戦に取り組んだ。
試作を重ね、実際に幼稚園で使ってもらい感想を聞いた。「おしゃれなデザインは子どもにとっては意味がない」ことや「根拠のない色を使うと、気持ち悪いと感じる子どももいる」ことなどを学び、製品に反映させた。時間や時刻の理解を促すため、子ども一人一人の自主性を伸ばす「モンテッソーリ教育」の考え方も取り入れている。
発売からの10年間で、社会全体のデジタル化は急速に進んだ。タカタレムノスが今年7月に子育て中の20~40代272人を対象にインターネット上でアンケートを実施したところ、約3割が「家にアナログ時計はない」と回答。「ある」と答えた人の中でも、4割はリビングに置いていなかった。
アナログ時計について土橋さんは「円グラフのように視覚で把握できるので、時計が読めない子どもでも残りの時間が塊で分かる」と指摘。「時間感覚を養う環境づくりにもつながる」と、その重要性を訴える。
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