僕も吃音だから、悩む子どもを支えたい 言語聴覚士になった当事者が教える「いわたコトバの相談室」

自らの経験を交えながら、吃音のある子どもへの対応の仕方を話す岩田よしきさん=川崎市で
吃音とは
話し言葉が滑らかに出ない発話障害の一つ。2~4歳頃に発症することが多く、成人の100人に1人が該当する。「わ、わ、わたし」と同じ音を繰り返す「連発」、「わーたし」と音を伸ばす「伸発」、言葉に詰まる「難発」がある。原因は特定されていないが、最近の研究では、環境的な要因よりも、生まれ持った体質が大きいとされている。
クラスメートに笑われ不安に
自宅マンションの一室に設けた「いわたコトバのそうだん室」には絵本やおもちゃが並ぶ。主に3~10歳の子どもと保護者が訪れ、それぞれ約1時間、悩みに耳を傾けたり、楽な話し方などをトレーニングしたりする。
岩田さんは「その子のペースに合わせたオーダーメードの支援を行っている。子どもと同じ目線に立ち、安心できる相手として向き合うことを大切にしている」と強調する。
埼玉県所沢市出身。小学生のとき、国語の音読や算数の九九暗唱の際にうまく言葉が出ず、クラスメートから笑われた。
話し始める前に不安や恐怖を感じ、次第に友だちとの付き合いを避けるようになった。中学校から陸上部で長距離走に打ち込んだのは「話さなくても結果を出せばいい」と思ったからだった。
とはいえ、大学の駅伝部では、体育会特有の大声であいさつする習慣が嫌で仕方がなかった。「吃音のことを知らない先生も多く、やる気がないからだと根性論にすり替えられた」と振り返る。
TVドラマに触発され資格取得
転機は、2016年に放映されたフジテレビ系のドラマ「ラヴソング」だった。
吃音で対人関係が苦手な少女と元ミュージシャンの臨床心理士のラブストーリー。ドラマを見て、吃音であることを初めて知った。
吃音を意識させると治らないとする「吃音診断起因説」などの古い知識が根強く残る中、両親が吃音だと伝えていなかったからだ。
ドラマに触発された岩田さんは「吃音に悩む子どもを一人でも減らしたい」と言語聴覚士を志し、大学卒業後は都内の専門学校に入学。国家資格を取得すると、川崎市麻生区の病院や高齢者施設を経て、2023年1月に教室を立ち上げた。
岩田さんによると、小児専門の言語聴覚士はほどんどおらず、相談できる場所は限られているという。

いわたコトバのそうだん室として作成した啓発ビラ。幼稚園、保育園、学校の先生に向けたメッセージも
落ち込む子に、自分を重ねて
最初に教室の門をたたいたのは9歳の男の子だった。
学校でからかわれ、精神的に落ち込んでいた。それはかつての自分自身の姿に他ならなかった。「すごく共感できた。先生と生徒ではなく、どうしたらいいかを一緒に考えた」
母親は、しつけや愛情不足が原因とする俗説にとらわれており、「遺伝的な要因が大きいことが分かってきている」と説明した。
男の子は現在も月1、2回ほど教室に来るが、「将来の夢はアナウンサー」と語るほどに自信をつけた。
YouTubeやnoteでも啓発を
活動は教室の中にとどまらない。YouTubeに解説動画を投稿するほか、文章投稿サイト「note」でも、子どもや保護者にアドバイスを送る。
地域の保育園や放課後デイサービスと連携し、スタッフや保護者をサポートしている。啓発ビラも作成した。
学校や職場での無理解に苦しむ人は今も多い。岩田さんは力を込める。「動画を見た子どもを勇気づけられればうれしい。当事者や家族だけではなく、周囲の理解も深めたい」
教室の予約や問い合わせは「いわたコトバのそうだん室」のホームページで受け付けている。
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