元宝塚雪組の俳優・歌手 彩凪翔さん 4歳で始めたバレエ 母のおかげで知った舞台の魅力

彩凪翔さん(五十嵐文人撮影)

各界で活躍する著名人が家族との思い出深いエピーソードを語るコーナーです
2人並んで…かけがえのない時間
今の私があるのは母のおかげです。原点は4歳で始めたバレエ。実は母が若いころダンスを習っていて、女の子が生まれたら踊りを習わせたい、それも踊りの基本になるバレエをと思っていたようです。ある日、バレエ団の発表会に連れて行かれて、覚えてないんですが「やりたい?」と聞かれて「やりたい」と答えたらしいです。
レッスンは、コンクールに出る年齢になると、ほぼ毎日。中学でも部活は諦めてバレエ漬けでした。やめようと思ったこともありましたが、母に説得されて続けました。やめていたら宝塚には行けなかったでしょう。
時には深夜までかかるレッスンの日々を支えてくれたのも母でした。自宅の最寄り駅まで必ず迎えに来てくれて。車で? それが母は運転できないんです。自転車か徒歩。家までの道を2人並んで帰ったなあ。かけがえのない時間でした。
宝塚を目指したのは中学2年の時です。バレエ団の先輩が宝塚に入って、公演に出るというので見に行ったんです。実家は宝塚劇場からそう遠くないのに、それが初めて。女性が男役をやるということしか知らない状態で。
舞台は本当に衝撃でした。華やかな歌と踊り。作品がよかったこともあって夢中になりました。そして思ったのが「ここなら毎日舞台に立てるんだ」。それまでのバレエの公演って1、2カ月練習して本番は1回とかでしたから。ちょうど進路を考える時期で、ここに行きたいと。
常に人と比べられる世界で16年
母も父も賛成してくれて、受験に向けた準備が始まりました。宝塚を目指す人は普通、何年も前から準備するのに、私に残された時間はわずか8カ月。しかもバレエはやってきましたが、歌は全くの白紙です。バレエの時間を削って、歌の稽古や譜面を読む練習、ボイストレーニングなど。宝塚に落ちたら高校受験をしないといけないから学習塾も。習い事のはしごです。バレエだけでもお金がかかるのに、両親には迷惑をかけました。
合格した時はみんな喜んでくれました。口数の少ない武骨な父が、好きだったたばこをやめて願掛けしてくれていたことを後で聞きました。
宝塚には16年在籍しました。常に人と比べられる世界。不器用だから常に努力というか、稽古するしかなかった。それでいろいろなことをやらせてもらって、やり切ったなと。母に退団の決意を告げたら反対されましたが、最終的に尊重してくれました。
今度公開される映画「男神(おとこがみ)」で初めて母親役に挑戦して、子どもを持つってこういうことかと思いました。わが家は兄を含めて4人家族。皆忙しくて一緒に過ごす時間は多くなかったけど、互いに支え合っていました。自立しながらもフレンドリーな家庭にあこがれますね。
彩凪翔(あやなぎ・しょう)
大阪市出身。2004年、宝塚音楽学校に入学。2006年に宝塚歌劇団に入団し、雪組の男役スターとして「春雷」のゲーテとウェルテル役、「るろうに剣心」の武田観柳役などで活躍した。2021年に退団後は舞台を中心に活動。9月19日から全国公開される映画「男神」で主人公の妻で巫女(みこ)の役を熱演。
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