区議会って何をしているの? 「子育てチェック隊」のサイトで議事録をチェックしてみると

子育て政策チェック隊のロゴ
議事録に慣れていなくても、読みやすく
データベースは女性議員や候補者の支援団体「Stand by Women(スタンド・バイ・ウィメン)」代表の浜田真里さん、日本女子大学教員の小野寺研太さんらが中心となって作成しました。議会の議事録は一般公開されているものですが、浜田さんたちは議会事務局に引用の許可を得た上で、子育て関連の質疑を抜き出してタグ付けなど整理し、議事録を読むのに慣れていない人にも分かりやすい構成に整えています。
現在は15区議会の記事録が公開されていますが、これまでに18区議会から了承を得られており、準備が整い次第、公開されていく予定です。

子育てチェック隊のサイトでは、各区の議事録がチェックできる
「質問なし」は関心なしではないことも
試しに豊島区議会をのぞいてみました。気になる子育て関連の課題について、キーワードで議事録を検索できます。それとは別に議員データベースが用意されており、個々の議員の所属政党や会派などが分かるほか、その人が実際にした子育て関連の質問を一覧できます。
子育て関連の質問がない議員は空欄になっていますが「その議会開催中に質問がなかっただけ」で、その議員が子育て関連政策に関心がない、という意味ではないことに注意する必要があります。
私は仕事で国会の議事録を検索した経験がありますが、国会と比べてこちらのデータベースはテーマがしぼられている分、明確でたどりつきやすい、と思いました。
質問の内容によって「教育」や「地域・社会活動」などの分野のほか、発達段階として「小学校・中学校」「大学(専門学校)」などの世代別のタグが付けられています。質問者だけでなく、答弁者も「区長」「教育長」などと分類されています。

子育てチェック隊の豊島区のページ
候補者のサイトだけでは選びにくいから
議事録を読み込んでデータベースに整える作業はかなり手間がかかります。許可を得られた区の23年の2月定例本会議から順次、アップしていく方針ですが、議会事務局が公開している議事録全体から考えると、ごくごく一部です。
ユーザーは、どんな使い方をしたらよいのでしょうか。浜田さんは言います。
「サイトを作ったきっかけは、2023年4月の統一地方選で、政治を研究している自分が地元区議会議員のだれに投票したらよいか、候補者のウェブサイトを見ているだけでは分からなかったからです。現職議員については議会での質問から子育て政策に関心があるのかどうか、区側の答弁から、掲げた政策はどの程度進んでいるのか、進むのかが分かります。候補者選びの一つの参考にしてもらえたら」
小野寺さんは「区議会って何をしているの?どんなところ?というような人にも見てもらいたいです。区議会が公開している議事録を読むのはかなり大変な作業なので、私たちのデータベースを活用してください」と話しています。

区議会の議事録をチェックした成果を発表する学生ら=早稲田大の平和研究ゼミで
SNSに惑わされず、考えて投票する力を
こちらのデータベースを使った授業が5月上旬、早稲田大でありました。社会科学部の堀芳枝教授の平和研究ゼミです。学生らは基となる区議会の議事録を読み込んでデータベース作りにも参加しながら「女性議員が増えると子育て関連の議論が地方議会で増えるのか」などの仮説を検証しました。
堀教授も「子育てチェック隊」の中核メンバーで、制度設計などに関わっています。
堀教授は冒頭、「平和実現のために市民の政治参加は一つのカギになると考えています。議事録を地道に読み込むことで、SNSなどに惑わされず、誰に投票するかを考える力を身に付けてほしい」とこのゼミを企画した狙いを説明しました。
ゼミ生約25人は6グループに分かれ、港、江戸川、足立、杉並、新宿、世田谷の各区について、近隣の区の議事録などもチェックしながら比較しました。その結果、6区とも女性議員は3割を超えていることが分かりました。国会に比べてかなり高い割合になります。
それぞれのグループはその議会での質問と答弁の分析もしました。「女性議員が増えると子育て関連の議論が増えるのか」については、港、杉並、世田谷の3区では増える傾向が見られました。その他の区では、男性議員も女性議員と変わらず子育て政策について質問していたり、以前に比べて女性議員が増えたけれども子育て関連の議論が増えたとまでは言えない、という区もありました。

グループ発表では全員が感想を話した
堀教授から「作業をしてみてどう思ったか」と聞かれると、学生らは「女性議員が多いと子育て政策もいろんな角度から質問されていた」「ゴミや公園など思ったより身近な話題について取り上げられていた」などと答えていました。
堀先生は「地方では女性議員の割合はまだまだ低いが、23区では目に見えて上がってきていて、若手も多い。(そういう議員らは)自分の経験や日常に基づいた質問が多い傾向がみられた。『個人的なことは政治的なこと』とあらためて思った」とまとめました。
浜田さんたちもこちらの授業づくりに携わり、当日も参加しました。浜田さんは「(データベースの構築も分析も)とても手間がかかることですが、それに意味があると思います」と話しました。子育てチェック隊では、今後も学校の教育現場でデータベースを活用した学びを提供していく予定です。
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