密室のエレベーターで身を守るには 神戸の女性刺殺事件を受け専門家がアドバイス 中高生向け防犯セミナーも

エレベーターでは、かばんを体の前で抱えるよう記者(左)に説明する武田信彦さん=東京都千代田区の東京新聞本社で
壁を背に、かばんは体の前で抱えて
犯行現場になったエレベーターは密室で声が外に聞こえにくく、逃げ場もない。「相手との距離を確保できず、身を守りにくい空間。乗る前の行動が重要になる」。東京新聞本社のエレベーターの前で、警察庁の「女性のための安全サポートブック」の作成に協力した市民防犯インストラクター武田信彦さん(48)=東京=は説明する。
エレベーターを待つ間は、扉の正面ではなく少し脇に立ち、周囲が視野に入るよう体を斜めに向けることがポイント。見慣れない人が一緒に乗ろうとしたら「お先にどうぞ」と譲ったり、メールが来たふりをしていったん離れたりして、1人で乗るようにする。
乗る際は、かばんは体の前で抱える。「襲われた時の盾になる」と武田さん。急に誰かが乗り込んできた際は、相手に背を向けず、階数ボタンの近くに壁を背にして立つ。危険を感じたら、肘や手ですべての階数と非常ボタンを押し、すぐに降りて逃げる。
女性の被害の9割が「1人でいる時」
会社からの帰り道など1人になる瞬間にも注意したい。警察庁の2018年の調査で、事件の被害に遭った女性の9割が1人の時を狙われた。夜間や人通りの少ない道に限らず、日中の公園や集合住宅の駐輪場でも事件は起きている。「逆に言えば1人にならない、1人だと思わせないことで犯行を断念させられる」
集合住宅にオートロックがあっても、住人の後をつけてきた不審者が一緒に入る恐れもある。安全だと過信せず、何度も振り返って警戒する意識が大切だ。
個人の対策は欠かせないが、武田さんは「防犯は地域全体で取り組む課題」と強調する。住民とあいさつを交わしたり、なじみの店を増やしたりなど、ゆるやかな関係を築くことは、犯罪者の嫌う「人の目」につながる。「防ぎようがない犯罪に思えても、何か手だてはある。自分を守ることをあきらめないで」
「ながら歩き」は背後に気付かず危険
スマートフォンの操作をしたり、音楽を聴いたりしつつ歩く「ながら歩き」も犯罪に巻き込まれる危険性が高い。警備会社のセコム(東京)による実験では、背後から近づいてくる人に気付く距離は平均で、スマホを操作していない状態では1.9メートル。操作していると1メートル、イヤホンで音楽を聴いていると0.1メートルでも気付かない。
セコムが1日に東京都渋谷区の私立富士見丘中学高校で開いた防犯セミナーでも、女子生徒約900人を前に、ながら歩きをする女性が後ろから人が近づいてくることになかなか気付かない様子を実演。不審者役の社員が被害者役の女性社員に密着してその距離を示すと、生徒たちは驚いていた。
富士見丘中学高校では2007年からセコムにセミナーを依頼。高3の竹本真埜(まや)さん(17)は「ながら歩きはしないようにしている。急に連絡が来た時でも意識を緩めないようにしたい」と話した。
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