「お父さん、布団で寝なよ」 高校生の頃、毎晩のように父親にかけていた言葉 30年たって…

(2025年11月16日付 東京新聞朝刊に一部加筆)

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 「お父さん、風邪ひくよ。布団で寝なよ」

 高校生の頃、掘りごたつの縁でごろんと横になり、電気もこたつもつけっぱなしで寝てしまう父に、毎晩のように声をかけていた。「うーん、わかった」と返ってはくるが、たいてい父は起きてくれず、夜中の2~3時まで居間で寝ていたようだ。

 当時40代で働き盛りだった父。テレビをつけたまま寝入ってしまうことが多かった。テレビを消すと「まだ見てる」と怒るので、音をだんだん小さくして、気付かれないように消していた。

 30年たった今、同じことをしている自分がいる。

 帰宅時間の違う3人の子に夕食をとらせ、台所を片付け、洗濯物を干し終え、翌日以降の段取りをつけると、午後11時を回る。ようやく訪れた自分の時間。ソファで本を開くが、30分もすると眠気に襲われ、いったん胸の上で本を閉じる。

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 「お母さん、風邪ひくよ。お布団で寝たら?」。高校2年の娘の声が聞こえる。「うん、ちょっと目を閉じてただけ。もう少し読んでから寝る」

 私が起きないと知っている娘は、そっと毛布をかけ、60分後に消灯するボタンを押して去って行く。

 同じ立場になり、なかなか寝床に行かなかった父の気持ちが少しわかったような気がする。

 お父さん、まどろみの中で娘に布団と優しい言葉をかけてもらうのって、うれしいものなんだね。

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