葉山を走る移動図書館「うみとやまのこどもとしょかん」 目指すは三浦半島巡回
北爪三記 (2019年1月31日付 東京新聞朝刊)
神奈川県葉山町下山口に、民家の一室を利用した私設図書館「うみとやまのこどもとしょかん」がある。子どもたちが伸び伸びと本に親しめる場をつくりたいと地元の母親らが2016年4月に開設し、運営する。「一人でも多くの子どもが本に触れる機会を増やしたい」との思いが高じ、昨年12月から移動図書館を試行。町内にとどまらず、三浦半島巡回を目指している。
「子どものための場所 声が響いてもいい」
図書館があるのは、富士山を望む海辺の神奈川県立葉山公園の近く。2階建て民家の1階、約20平方メートルの洋間は三方から光が差し、書棚から選んだ本をじゅうたんの上で自由に楽しめる。
「子どもを中心に考えた図書館をつくりたかったんです」。運営する一般社団法人の代表理事を務める中尾薫さん(54)が振り返る。2015年、初めて訪ねた伊万里市民図書館(佐賀県)で、吹き抜けの真ん中に広がる子どもコーナーに目を見張った。「声が響かないんですか」と尋ねると、職員は「響いていいんです。子どものための図書館ですから」。
蔵書4000冊に倍増 鎌倉、横須賀からも親子連れ
感銘を受けた中尾さんは、自ら町内で運営する認可外幼稚園の保護者に思いを伝えた。賛同者が集まり、中には図書館司書の資格を持つ母親もいた。知人の空き家を借り、手作りの書棚を設置。町の広報紙などで本の寄贈を呼び掛けた。運営資金は寄付やバザーの売り上げなどで賄う。
2015年11月のプレオープン時に約2000冊だった蔵書は現在、4000冊。毎週火、木曜の開館日には町内だけでなく逗子、鎌倉、横須賀市などから親子が訪れることもある。「その場で読み聞かせできるのがいい」と好評で、来館者数は年間約750人を数える。
500冊を乗せた「うみやま号」三浦へ逗子へ
移動図書館の計画は昨年、企業の助成金を得てスタート。中古のキャンピングカーを購入し、子どもたちに海と山の絵をペイントしてもらった。公募と投票で「うみやま号」と名付けられた車両には、約500冊を積載できる。
昨年12月から今年1月にかけ、町内で3回出張した。三浦半島巡回を目標に、2月は三浦市、3月には逗子市でイベントに参加する。中尾さんは「子どもからお年寄りまで幅広い年代が集う場にできたら」と意気込む。
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