映画「こどもしょくどう」 日向寺太郎監督インタビュー 「子どもの目に映る今の社会を描く」
-なぜ子ども食堂をテーマにした映画を撮ろうと思ったのですか
今、各地に広がる子ども食堂がどんなところかを描きたいというよりも、多くの人たちが「子ども食堂をつくろう」という気持ちになる今の社会状況を見ていく必要があるのではないかと考え、作品を企画しました。子どもたちにとって今の社会がどういうふうに見えているのか、子どもたちを主役に、子どもの目線で描きました。
―今の社会をどんなふうに見ていますか
かつて多くの人が頼っていた血縁や地縁が薄くなり、さまざまな共同体がなくなってきています。映画では、橋の下で車の中で暮らす姉妹が象徴的です。この姉妹も回想シーンでは、両親と一緒に海に旅行をしていて、幸せな日常を送っていた。でも、何かのきっかけで、そういう生活状況になるのです。そして、今の社会ではそれは誰にでも起こり得ることなのだと思います。病気にかかったり、あるいは勤めている会社が倒産したりといった大きなことが起きてしまった時、社会には救う網がないからです。
-そんな社会の中で、子ども食堂にはどんな意味があるのでしょうか
最初はご飯を満足に食べられない子どもに食事を提供する、という目的で始まりましたが、大人が来ても良いなど地域の共同体になっているような子ども食堂もあります。「地縁」に近いといえるかもしれません。そんな地域の拠点が全国に2300カ所以上もできているのです。すばらしい新しい動きだと思います。
―映画を見た人に考えてほしいことは
今の社会をつくったのはわれわれ大人で、子どもに責任はないということです。一方で、思いを持った人と出会うことによって、人は変わり得るし、その積み重ねで社会は変わっていけると思います。子ども食堂も思いを持った人の行動が形になり、広がっています。「人と人が出会うことによって、人は生きていけるのではないか」というのが、映画に込めた思いです。
広がる子ども食堂 運営を続けるための支援が課題
子どもの貧困が社会の課題となる中、全国的な広がりを見せる子ども食堂。企業が取り組みを支援する動きなどにも押され、2018年の市民団体の調査では、全国約2300カ所に広がっているという。しかし、運営を継続していくための支援体制は十分ではない。
東京都豊島区で2月10日に開かれた子ども食堂の運営者やスタッフ、支援者が集う「こども食堂サミット2019」では、持続可能な仕組みにするための課題が話し合われた。
全般的に「ヒト・モノ・カネ」が足りず、食材の調達から調理、場所の提供まで、多くが関係者の善意に支えられているのが現状だ。サミットの出席者からは「コメや野菜を提供してくれるところもあるが、(体をつくるのに必要な)肉や魚の入手が難しい」という指摘や「スタッフが足りない」などの切実な声が相次いだ。資金不足も課題だが、「子ども食堂だけを特別扱いできない」などとして、行政の補助金を得ることが難しい状況もあるという。
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