ヨシタケシンスケさんの頭の中って!? 「くだらなさと大事さを行ったり来たり」 人気の絵本作家、意外にネガティブ思考
「思わず考えちゃう」 気になったことを手帳にスケッチ
テーブルに置かれたリンゴを見て「もしかしたらこれはリンゴじゃないかも」と空想を広げるデビュー作『りんごかもしれない』。服を脱ごうとして引っ掛かってしまった男の子が「ずっとこのままだったらどうしよう」と妄想する『もうぬげない』。よくある日常風景が、想像力によって愉快で壮大な物語に変わっていく点が、ヨシタケさんの絵本の魅力の一つ。
作者自身も仕事や外出、育児の合間に「思わず考えちゃう」タイプだという。20年前から常に手帳を持ち歩き、気になったことや思いついたことをスケッチで残している。記録の対象は「描いておかないと忘れてしまうくらいどうでもいいこと」。描く理由は「自分を盛り上げるため」だ。
落ち込みやすい性格 想像力はもろ刃の剣
「もともと落ち込みやすい性格なんです。想像力はもろ刃の剣というか、いろいろと心配し過ぎたり、悲しいニュースでつらい気持ちになったりする。そんな時に自分を励ますため、どうでもいいことをどうやれば面白がれるか、常日ごろから考えるようになった」。その作業の蓄積が、絵本の作風となって結実した。まさに本書は作家の「ネタ帳」である。
収められているのは、例えばこんな一こま。「使った後のストローの紙袋が気になる」「母親に抱かれた子どもの靴が落ちた瞬間」「仕事で自分の短所をどう長所に変えるか」-。本当にどうでもいいようなことからまじめなことまで、ヨシタケさんは考え続ける。「くだらなさと大事さを行ったり来たりするこの感じが、まさに生活するということだと思う。その感じを今後も大事にしたいし、面白がっていきたい」
売れっ子の今も「生きづらい少数派に向けて描いている」
2013年、40歳と遅咲きのデビューだが、書店員が選ぶ「MOE絵本屋さん大賞」の5回の受賞や、世界最大の児童書見本市で発表される「ボローニャ・ラガッツィ賞」の特別賞受賞など、瞬く間に売れっ子になった。それでも「自分は少数派の読者に向けて描いている」と言い切る。
「正論を言われると反抗したくなる、周りが熱くなると冷めてしまう、僕はそんな子どもだった。同じように肩身の狭い思い、生きづらい感じを抱えている人に面白がってほしい」
とはいえ今回のようなエッセー執筆は初体験で、緊張もあるという。「読み返してみて、めんどくさいやつだなと自分でもイラッとしました。『分かる』と言ってもらえればうれしいが、『嫌い』と言われる覚悟もできています」。そう語った後、心配そうに付け加えた。「でも、せめて半々くらいだといいな…」
なるほど!
グッときた
もやもや...
もっと
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