「吃音が心配な小4の孫、どうすれば…」の悩み 当事者と親、専門家のアドバイスを紹介します〈子育て相談 すくすくねっと〉 

藤原啓嗣 (2022年8月19日付 中日新聞朝刊)

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 言葉が滑らかに出ない「吃音(きつおん)」。「小学4年の男の孫が大型連休明けから、話し始めの言葉に詰まるようになった」と悩む愛知県の女性(72)の相談に、吃音の子どもを育ててきた親や当事者から経験談が寄せられた。「ゆっくり話を聞いてあげて」「言語聴覚士に相談を」といった助言や励ましが多かった。

話し始めの言葉に詰まる男の子 小児科や学校に相談したが…

 小学4年の男の孫が5月の大型連休明けから、話し始めの言葉に詰まるようになりました。いわゆる吃音(きつおん)で、特に最初の音がア行だとつらそうです。小児科にも学校にも相談しましたが、なかなかいい案がなく困っています。幼いころからプレッシャーを感じやすい面があります。(愛知県、72歳)

無理に治そうとせず見守って

 愛知県一宮市の女性(47)は、長男が保育園に通っていた時、話し始めに同じ音を重ねるようになり、その後、話し始めの言葉に詰まる症状も出た。言葉がなかなか出てこないと長男が焦ったため、「ゆっくり落ち着いてね」と声掛けして待った。大学生になると吃音はほぼ出なくなったといい、女性は「無理に治そうとせず、見守ることで本人も安心するはず」と話す。

ゆっくり聞くことが大切

 三重県鈴鹿市の女性(60)も「ゆっくり聞くことが大切」と助言した上で、「育て方に問題があったとは考えないで」とおもんぱかる。女性の長男は3歳の時に症状が出たが、家族が気にしているそぶりを出さないように心掛けると、治まっていった。長男はその後就職の面接試験もこなし、社会人として働いている。

周囲が吃音を受け入れて

 「周囲の人たちが、吃音を受け入れることが大切」と言うのは、愛知県の女性(41)。長男は幼稚園のころから吃音があり、指導を受けた言語聴覚士から「言葉がなかなか出てこないとつらそうに感じるが、本人にとっては普通のことで、スムーズに話すように努める方が疲れる」と教わった。「家族がつらそうに見ていると、その感じ方に当人が反応してしまう」と案じる。

言語聴覚士のいる医院へ

 岐阜県下呂市の男性(51)も「言語聴覚士のいる医院に相談してみては」と勧める。男性の長男が吃音で、言語聴覚士から話し方の訓練のみならず、吃音とどう向き合うかという精神面のケアも受けた。

 当事者の長男も取材に応じてくれた。中学校で吃音の話し方をまねされ、からかわれて悩んだという。対策のため、自己紹介のたびに、吃音とは何かや、自身の話し方をまねしてほしくないと伝えるようにすると、からかわれなくなった。

 長男は「吃音は見た目で分からず、正しく知らない人が多い。自己紹介で吃音を打ち明けると、気持ちの面で一歩前に踏み出せるかもしれない」とエール。大学生になった今は自身の経験を生かそうと、言語聴覚士を目指して勉強中だ。

否定せず、ともに生きていこう 「注意せず、家族で話したくなる環境づくりを」

 吃音は、同じ音を繰り返す、音を伸ばす、話し始めの言葉を出せずに間が空いてしまうなどの症状がある。同時に口元や手足など体を動かす「随伴症状」が出る人もいる。

図解 吃音かと思ったら… 子どもとは? 家族では?

幼児の5~8%に症状 多くは自然に目立たなくなる

 日本吃音・流暢(りゅうちょう)性障害学会(事務局・金沢市)の理事で、北里大准教授の原由紀さん(57)によると、吃音は、幼児の5~8%に症状が出る。先天的な要因が大きく、発達障害の一つとされるが、成長して症状が進むのは、周りの対応や本人のとらえ方も関係するとみられている。

 原さんは「原因ははっきりと分かっていないが、子育てやしつけのせいで発症するのではない」と強調。症状が出た人の7~8割は小学校に上がる頃までに自然に目立たなくなる。吃音が残るのはおよそ100人に1人で、男性が多い。

 今回の相談に対しては「幼い時期に『あ、あ、ありがとう』など、音を繰り返すなどの症状はありませんでしたか。症状が進み、言葉が出にくくなっている可能性もある」と推察する。

「ことばの教室」や言語聴覚士のいる医療機関に相談を

 その上で、原さんも、小学校の「ことばの教室」や言語聴覚士のいる医療機関に相談するよう勧める。吃音について正しい知識を得た上で、子どもが力まず楽に話す方法を探るため、指導を受けると良いからだ。

 家族には、ゆっくり話を聞く時間をつくることを提案。話し方でなく話す内容や面白い考え方など良い面をたくさん褒めるといい。言葉が出てくるまで待つことも大切という。「話し方を注意するのは避けて。指摘されると本人は吃音をいけないことだと思ってしまう。家族で一緒に話をしたくなる環境を」と助言する。

「同じ悩みを抱えた人たちと知り合い、視界が開けた」

 「自分の吃音を否定せず、ともに生きていこう」と話すのは、自身も吃音で悩んできた日本吃音臨床研究会(大阪府寝屋川市)の伊藤伸二会長(78)だ。

 伊藤さんは子どものころ、吃音を気にして同級生や先生らと会話できなかった。治療のために21歳から通った矯正所で、同じ悩みを抱えた人たちと知り合い、視界が開けたという。

 「笑われたり、からかわれたりしていたのは僕だけじゃなかったと分かったのが大きかった」と伊藤さん。吃音の症状が出ても話すことをためらわずに、仕事に打ち込み、人前で何度も話すうちに、自分なりの話し方が身についたという。

 今は講演などで適度に緊張していると症状は出ないが、家でくつろいでいると出ることもあると言う。「吃音は不思議なもので自分でも完全に制御できない」

 同会が主催する集いのように、吃音に悩む人たちのサークルは各地にあり、参加を勧める。「子どもが一人で吃音に向き合うのはしんどい。多くの人の生き方を知り、親や仲間と一緒に付き合い方を考えていくといい」と呼びかけた。

 こんな質問も来ています。

活発な3歳長男 家の中で体を動かすには?

 3歳の長男は活発で、外で遊ぶことが大好きです。育児休業中は毎日公園に行ってました。仕事に復帰してから、一緒に外で体を動かす時間が十分に取れずにいます。家でできる体を動かす遊びや、時間をつくるために工夫できることがあれば知りたいです。(愛知県、35歳)

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  • 小6 says:

    僕は吃音で言葉がうまく発せなくて例えばこ、こ、こんにちは。ってなるんです。どうすればいいんですかね?早く治りたいです。

    小6 男性 10代

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