高校生の医療費無償化、多摩26市は真っ二つ 11市が全員、他は所得制限あり、2市が未定 23区との格差が拡大
来年度から23区は「完全無償化」
現在、中学生までを対象としている東京都の医療費無償化は来年度、高校生年代に広げられる。都の枠組みでは、所得制限(4人家族で年収約960万円)や通院時の自己負担(200円)があり、制限や負担をなくすかどうかは各自治体の判断になる。現時点の考えを多摩26市に確認すると、所得制限は「なし」が11市、「あり」が13市(2市は未定)。自己負担は「なし」が4市、「あり」が20市だった。
対して23区は「医療費助成は所得で差別するべきではない」として所得制限も負担もない完全無償化を決めた。23区は中学生までの医療費も完全無償化を実現。一部の市で小中学生の所得制限などを残す多摩地域との格差は、さらに広がることになる。
なぜ違う? 独自財源が必要だから
背景にあるのは各自治体の財政事情だ。都は、所得制限を超える部分と自己負担分は都による助成の対象外としており、完全無償化には区市町村の独自財源が必要になる。23区に比べ財政力で劣る多摩地域の一部の自治体には、高いハードルだ。
所得制限「あり」と答えた市の担当者は「子どもの病気やけがを治す際、隣町は無料なのに、ここだと有料。正しいとは思えないが、市には財源もなく難しい」と話す。
立川市で、小中学生から高校生まで全て所得制限をなくすには約1億円の費用が要る。市は制限や負担の撤廃に向けた準備を進めているが、財源の確保が課題だという。
東村山市長は都を批判「責任を」
「都の施策により23区と多摩の格差が拡大している」と、都を批判するのは都市長会副会長を務める東村山市の渡部尚市長。高校生の医療費無償化は今年1月、都が区市町村との事前協議なしに突然に発表。市としては、都が提案した事業なのだから、格差是正にも責任を持つべきだ-という主張だ。
ただ都は、設けている所得制限は児童手当と同じ水準であり、福祉施策が必要な人が医療費助成を受けられる仕組みであるという立場。自己負担も過剰な受診を防ぎ、都の担当者は「適切な医療体制の確保のためには必要」としている。結果として自治体で格差が広がる点に関し、都の担当者は「良いと思っているわけではないが、あくまでも自治体の取り組みの結果。都として制限や負担をなくすのをやめてください、ということでもない」とする。
来年度から3年間は所得制限を超えた分と、自己負担分以外は都が医療費助成の全額を負担するが、2026年度以降の都と区市町村の事業費負担の割合も結論が先送りされたまま。両者の主張の隔たりは大きく、格差解消の見通しは立っていない。
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