物価高がひとり親家庭を直撃 入浴は週3、大学あきらめた、生きていくのがつらい…支援団体「親子の健康が危機にある」
野菜炒めも食べられなかった
「野菜が高いときは野菜炒めも食べられなかった。子どもたちは『野菜食べたい』『果物食べたい』と言うが、手が出ない」。東京都内に住むシングルマザーの女性はため息をつく。
元夫のドメスティックバイオレンス(DV)に苦しんでいた女性は1年半前、高校生と中学生の娘たちとともに警察に保護され、シェルターに逃げ込んだ。福祉事務所のすすめで、元夫が住む場所から離れたところにアパートを借り、生活保護を受け始めた。
「物価高で食費は2倍になった。入浴も週3回にとどめている」。スーパーでの出費も、同じ内容で以前なら1回2000円弱だったのが3000円を超える。支援団体から食料の提供を受けてしのいでいるが、長女は大学進学をあきらめた。
身長や体重が増えていない…
支援団体の認定NPO法人「キッズドア」(渡辺由美子理事長)の調査によると、子どもがいる困窮家庭のほぼ100%が物価高で「家計が厳しくなった」と答えた。うち「とても厳しくなった」は70%超に達した。調査は11月中旬、キッズドアに食料支援を申し込んだ家庭を対象にインターネットで実施し、1846世帯が回答。物価高を実感する項目では「食費」が99%で最多だった。
物価高が子どもの心身の成長に与える悪影響の有無を尋ねたところ「大いに出ている」が16%。「出ている」の33%と合わせ約半数に上った。具体的な内容を複数回答で聞くと「必要な栄養がとれていない」が70%で最も多く「風邪などの病気になりやすくなった」28%、「身長や体重が増えていない」25%などの実態が明らかになった。
自由記述には「子どもたちの文房具、服や靴を買えず我慢」「寒い寒いと言う子どもを見ていたら生きていくのがつらくなった」などの声が並ぶ。
継続的な現金給付を急いで
認定NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」(赤石千衣子理事長)が11月下旬、会員のひとり親を対象にインターネットで実施した調査(回答数1255人)では、家賃、電気、ガス、水道代の中で10月に1つでも滞納があったと答えた人は約25%に上った。家計を補うため、4月から10月にかけて借り入れをしたかとの質問には「した」が約40%。クリスマスと年末年始の行事が「どちらもできない」と回答したのが70%近くで「できる・少しはできる」は30%余にとどまった。
キッズドアの渡辺理事長は「コロナ禍での減収に加え、物価や光熱費の高騰で子どもや保護者の命と健康が危機にさらされている」と指摘。政府は本年度、住民税非課税世帯などを対象に臨時給付金を支給したが、岸田文雄首相が掲げる子ども関連予算倍増の財源論は来夏に先送りした。渡辺氏は「子育て世帯は働いて納税していることが多いため、非課税世帯向けの支援だけでは十分ではない。単発ではない子ども一人一人への継続的な現金給付を急いでほしい」と訴える。
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