更年期と上手に付き合うには? 子育て・介護・仕事との「四重苦」に注意 40歳になったら婦人科の女性健診を

(2023年3月8日付 東京新聞朝刊)
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「女性の健康とメノポーズ協会」の三羽良枝理事長=東京都新宿区で

 女性は40代後半から50代にかけて更年期を迎え、そのうち8割の人は心身に何らかの不調が現れるとされる。仕事や家事、子育て、介護などを抱える多忙な年代。更年期症状と上手に付き合うポイントをまとめた。3月8日は、国連が定める「国際女性デー」。

更年期とは

 閉経前後の5年間ずつ、計10年間を指す。閉経年齢の平均は50歳ごろのため、一般的には45~55歳ごろにあたる。心身の不調の症状や重さは個人差が大きく、ほてりや発汗、動悸(どうき)のほか、不眠や頭痛、イライラ、めまいなど多岐にわたる。

晩婚・晩産化で重なりやすく

 正社員として東京都内で働く49歳のある女性は、子育てと介護を一手に担っている。子どもはこれから教育費がかかる13歳。離婚したため働き手は自分だけ。同居の母親が体調を崩して介護が必要になる中、更年期で心身の不調を抱えた。内科を受診したところ、「仕事を辞めるか、休むかしてはどうか」と医師から言われたという。

 「更年期の不調に、子育て、介護、仕事が重なる。典型的な四重苦の状況」。「女性の健康とメノポーズ協会」(東京)の三羽(みわ)良枝理事長は、女性の状況を「四重苦」という言葉で表現する。メノポーズとは、更年期の意味。「晩婚・晩産化で、大変な時期が更年期と重なりやすくなっている。責任感のある人ほど降格の申し出や辞職の選択をしがち」

65%が症状あっても未受診

 三羽さんは、更年期を乗り切るには「積極的なヘルスケアが非常に重要」と話す。医療面でまず大事なのは、40歳になったら婦人科で女性健診を定期的に受けること。「更年期症状を引き起こすのは女性ホルモン(エストロゲン)の低下。数値を継続して調べることで自分の体の現在地と変化を把握できる。ぜひパートナードクターを持って」

図解 更年期を乗り切るポイント

 ただ、同協会とNHKなどの共同調査(2021年)では、更年期になって心身の不調を自覚した働く女性の65%は医療機関を未受診で、婦人科を受診した人は31%にとどまっていた。

 更年期には、頭痛や湿疹、うつ症状といった一見別の病気のような症状が現れる。そのため「内科や皮膚科、精神科など複数の診療科を受診しても異常が見つからず、適切な医療が受けられない人がたくさんいる」と三羽さん。この年代で体の不調を感じたら、婦人科を受診する選択肢を持つことが大事だという。

「誰もが通る道」と我慢しないで

 医療機関では、どんな治療が行われるのか。関東労災病院(川崎市)の産婦人科医師で「働く女性専門外来」を担当する星野寛美さんは「他の病気が隠れていないかを確かめた上で、必要ならエストロゲンを補充するホルモン療法や、漢方薬を使った治療に進み、症状の改善を試みることが多い」と説明する。

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関東労災病院の産婦人科医師で「働く女性専門外来」を担当する星野寛美さん=川崎市中原区で

 環境面では、職場の同僚や家族に心身の不調の状況を知ってもらうことが第一歩。理解を得るだけで不安感が減り、パフォーマンスも上がる。つらさや、してほしいことを具体的に伝えると周囲も協力しやすい。

 家族や同僚は、よく話を聞いて協力し、他の人と比べないように気を付けたい。更年期症状は個人差があるため、「○○さんは平気だったのに」といった言葉は当事者をより落ち込ませてしまう。星野さんは「『誰もが通る道』『時期がくれば治まる』と我慢して悪化させることは避けてほしい」と強調する。

 三羽さんは「周囲の理解を得ながら仕事や家事などをこなす方法を見つけることが大切。まずは『相談する』というアクションを起こして」と呼びかける。

 女性の健康とメノポーズ協会はホームページに全国の婦人科・更年期外来のリストを掲載している。

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