「反対咬合(受け口)」は幼少期から治療を 放置すると下あごの骨が異常に発達する可能性 負担の少ない装置も登場
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舌の状態などが原因で3~4歳から出現
「反対咬合は放置していると、下あごの骨が異常に発達することもある。早期治療が望ましい」。小児の反対咬合に詳しい栄駅前矯正歯科クリニック(名古屋市)院長の芝崎龍典さん(51)が言う。
反対咬合は、早い子で3~4歳で現れる。原因には遺伝のほかに、舌などの口腔(こうくう)機能の発達などがある。「最も多いのが、舌が正常な位置よりも下がっている状態にあること」と芝崎さん。通常、舌の先は上の前歯の少し後ろにあたっている。ところが舌の筋肉が弱かったり、舌の下にある膜状のひだ(舌小帯)が短かったりすると舌を上げられない。その結果、下がったままの舌が下あごの歯を押すことになり、すきっ歯になったり、下あごの成長を促したりする。
また、上唇の力が強くて上の前歯を押すことで、前歯が内側に倒れてしまうことも。上あごは10歳ごろまでで成長が終わるのに対し、下あごは身長の伸びとともに成長し、男子は18歳ごろまで続くといわれる。
反対咬合は見た目にコンプレックスを感じることがあるが、食べにくさが問題になることも。上下の歯がかみ合っていないので、食べ物を細かくかみ砕くことが難しくなり、消化が悪くなる。また、舌の筋肉が弱い場合、かみ砕かれた食べ物を舌の上でまとめてのみ込む力も弱くなり、食事に時間がかかる。芝崎さんの元には、小学校に入学前の親子から「給食に時間がかかることが心配」と相談があることも多いという。
費用は20~30万円 長期に及ぶことも
従来、幼児に負担が少ない治療法はなかった。自然治癒する確率が比較的高いとされ、治療せずに経過観察することが多かった。ただ、30年ほど前に9割が自然治癒しないという調査結果も明らかになり、徐々に早期治療の重要性が認められるようになってきた。
2004年には、取り外しができるマウスピース型の矯正装置が登場。装置の真ん中に舌をのせる部分があり、口に装着すると舌が上へ持ち上がり、上あごを前方に押す。3、4歳ごろから使用でき、装着の時間が長いほど効果が高い。
芝崎さんによると、症状や状態、親や子どもの意思をよく見極めて使うと多くに改善の傾向が見られる。自由診療のため、費用は検査や診断を含めて一般的に20万~30万円ほどかかり、治療期間やクリニックにより総額は前後するという。
上あごの発達段階である10歳までなら、口の外にフェースマスク型の装置をつけて、上あごを前方に引き出す治療法もある。
こうした矯正治療で改善が見込めない場合は、外科手術となる。下あごの骨を切って後方に移動させる方法や、上あごを前方に引き出す方法がある。いずれも身長の伸びが止まってからとなり保険は適用される。
反対咬合の治療は子どもによっては、3~18歳と非常に長く続くことになる。芝崎さんは「治療に対して子どもの気持ちが変わることもよくある。子どもの思いに寄り添った治療の選択が必要」と話す。
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