季節外れの感染症 免疫が弱い子どもをウイルスから守るには  

熊崎未奈 (2024年9月3日付 東京新聞朝刊)
 新学期が始まり、体調を崩していませんか? 季節を問わず、感染症がはやる昨今、どんなことに注意したらいいのでしょうか。愛知県の江南厚生病院こども医療センター長の西村直子さんに聞きました。 

感染を繰り返しウイルスに強くなる

-感染症とは、どんな病気でしょうか。

 ウイルスや細菌といった「病原体」が体に入って増殖し、発熱やのどの痛みなど何らかの症状を引き起こすのが感染症です。風邪はウイルス感染症の一つ。ライノウイルスやコロナウイルスなど、原因になるウイルスはさまざまです。

-どのように人に感染するのでしょうか。

 風邪のウイルスは飛沫(ひまつ)感染が中心です。病原体を含んだせきやくしゃみのしぶきを浴びることで感染します。それから、接触感染。病原体の付いた物や感染症にかかっている人に触れた手で、口や鼻、目を触ると感染します。はしかや水ぼうそうのウイルスでは空気感染もあります。病原体が空気の流れに乗って広がり、同じ空間にいる人が吸い込んでうつります。

-子どもと大人では感染症へのかかりやすさは違いますか。

 人間には、免疫という病原体から体を守るシステムがあります。子どもは免疫が発達途中なので大人に比べるとかかりやすいです。初めて感染したときは、病原体という敵に対する武器を持っていません。成長し、感染するのが2、3回目になってくると、敵との戦い方を覚えているので、感染しにくくなるのです。

季節を問わず感染症が流行するのは

-感染症の予防にはどのような方法があるのでしょうか。

 大きく分けて、三つあります。まずは感染源を取り除く。例えば、ドアノブなど、みんなが触るところを消毒したり、感染している人との接触を避けたりして、病原体に触れないようにします。二つ目は、感染する経路をさえぎる。例えば、せきやくしゃみのしぶきを浴びないようにマスクをする、帰宅後や食事前に手洗いをするなどです。

 最後は、感染しにくい体にすることです。人にはもともと、さまざまな敵から体を守る自然免疫がありますが、疲れていると十分機能せず、病原体が増殖しやすくなります。睡眠や栄養をしっかり取って、元気な体でいることが予防になるのです。ワクチンがあれば、予防接種も効果的です。

西村直子さん

-ワクチンはどういう仕組みなのでしょうか。

 病原体の毒を弱めたものや、病原体の一部を取り出して加工したものがワクチンです。それらを体に取り入れることで、あらかじめ病原体との戦い方を覚えておく仕組みです。予防接種をしないと、感染しやすくなるだけでなく、感染したときに重い症状が出たり、別の病気を引き起こしたりする恐れもあります。

-今年の夏は新型コロナウイルスが広がっています。なぜですか。

 夏休みで人の行き来が増えたことや、冷房で窓を閉め切るため、部屋の換気が不十分になること、マスクをする人が減ったことなどが理由と考えられます。

 病気によって流行しやすい季節があります。例えば、手足口病は夏、インフルエンザは冬など。ただ、コロナ禍の後、季節外れの感染症がみられます。理由ははっきり分かりませんが、コロナ禍の間、コロナ以外の感染症が少なかったので、免疫を持っていない子どもが多いからかもしれません。

 コロナ禍が落ち着き、感染症への意識は薄れてきているかもしれませんが、規則正しい生活を心がけ、風邪の症状があったら無理をしないなど、改めて気を付けてほしいと思います。